消費税増税と低所得者対策

2012年9月6日

社会保障と税の一体改革では、社会保障財源としての消費税増税が決まった。それに伴って、低所得者対策をどうするかが論点になっている。私は、低所得者ではなく、低消費者(絶対的に生活水準が低い層)への十分な配慮が必要だと思うが、いずれにしても、一部の層にとって増税は重い負担であるから、いわゆる低所得者対策や弱者対策が必要である。


ただ、低所得者対策の議論は、出発点を間違うと混乱極まりないことになる。というのも、消費税増税の目的は社会保障制度の維持と充実であり、それ自体がそもそも弱者対策という性格を有している。社会保障給付は、長生き、罹患、要介護、低所得といった状態におかれることを要件としてなされる。そうした仕組みの持続性を回復させることが一体改革の趣旨であり、消費税増税はその手段の一つである。


また、既に決まったか議論の途中であるかは別にして、一体改革には様々な低所得者対策が並んでいる。年金生活者支援給付金の創設、高額療養費制度の拡充、総合合算制度や給付付き税額控除の導入、いわゆる簡素な給付措置、後期高齢者医療支援金や介護納付金における総報酬制の拡大・導入、国民健康保険料軽減の拡充、介護1号保険料の軽減強化、などである。さらに、6月の三党合意によって、消費税に関する複数税率(軽減税率)の検討も法律に盛り込まれた。


ついでに言えば、給付の拡大が社会保障の「充実」であると差し当たり理解できるとしても、公費投入による低所得者の保険料軽減も「充実」とカウントされている。保険料を支払えない人への補助金を、消費税増税で賄って制度の持続性を高めるという趣旨だ。一方、保険料が低所得者で軽く高所得者で重くなるよう、国民の間での負担配分を変える制度改正をして公費を削減することが「重点化・効率化」とカウントされている。給付を減らすのではなく、公費を減らすことを効率化と呼ぶのは理解しにくいが、それだけ消費税率の上げ幅は抑制されている。


また、税制抜本改革法には、「財政による機動的対応が可能となる中で、(中略)成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分すること」を検討する旨の条文が三党合意によって挿入された。消費税収は社会保障給付と少子化対策にしか充てられないことになったが、増税で財政に余裕が生まれることをよいことに無駄な支出が増えないか注視したい。消費税増税は経済状況の好転が条件だからといって、本当の投資とはいえない所得対策としての公共投資を増やしてはならないだろう。


低所得者対策と言ったとき、低所得者とはいったい誰を指しているのだろうか。高齢者全体や高齢化した地方全体が一律に低所得者というわけでは全くない。高齢者平均の消費は堅調であるのに対し、希望通りの就業ができない若者や子育て費用の負担が重い世代は消費水準を低下させている。消費税増税の眼目は、全国民で社会保障の費用を負担することである。低所得者対策の対象者を吟味なく広げてしまって負担の構造があまり変わらないのなら、何のために消費税増税をするのか分からなくなってしまう。

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