中国の医薬品産業、医療改革加速で吸収合併機運再び高まるか?

2012年8月15日

中国政府は第12次5カ年計画で内需拡大に必要な“民生の保障・改善”に財政を重点配分している。急速に進行する高齢化もあり、医療分野の改革は喫緊の課題である。制度面では、都市・農村三種基本医療保険の加入者は13億人を超え、前進が見られる。そして、特に農村部で問題視されていた高額医療費や、医療機関のレベル格差にメスを入れる段階に入っており、県クラスの公立病院に改革の重点を置き、総合医の育成を急いでいる。ただ、総体的にみると医療機関の質向上が進んでいないのか、設備・サービスが充実している香港で出産する中国人が後を絶たず、香港人との間で問題が生じたり、一方で、上海のように先進的な都市では、来年開業予定のがん治療の専門病院が建設中だったりと、改革推進が逆に格差を広げる懸念もある。

しかし、中国政府は外資の参入促進で医療サービスに刺激を与える方針に変更はない。外資導入はそのキャパシティー拡大の即効性と中長期的なノウハウの普及力が評価されている。既存の外資系医療機関に加え、5月末に香港の香港港安病院がCEPA(経済貿易緊密化協定)を利用して深圳に診療所を試験的開業し、6月27日にはECFA(両岸経済協力枠組協議)を活用して、台湾の聯新国際医療集団が単独資本で上海への進出を果たした。対外市場開放の試験的な場として利用されやすいCEPA・ECFAによる参入の波も本格化してきている。

ただ、医療費の削減と医療行為への信用性向上に伴う医薬品業界の整理に関しては、もう一段の改革の後押しが必要そうだ。中国の医薬品産業は売上高に占める民間企業の存在感が突出している。しかし、内訳をみると、特に製剤の輸出まで勘案すると外資や香港・マカオ・台湾系への依存度が高い。ジェネリック医薬品ではプレゼンスが高かった中国メーカーも、外資が自主ブランド製品の値下げを実施しているため、競争が激化している。

この環境下で中国政府は医薬品分野で2つの成長を加速させていく。1つは、“漢方薬”という独自の市場を有する点を有効活用する。10年の売上高は3,172億元だったが、医薬品市場全体の伸びを上回る成長だった。医薬品市場全体の4分の1を占める漢方薬に関しては、国家漢方薬管理局によって11年11月に漢方薬資源を調査する「第4回全国漢方薬資源センサス」を約20年ぶりに実施するなど、資源・品質の管理、知識の継承と革新が強化され、その独自性を活かす下地を整備している。第12次5カ年計画期間中に1億元超の支援金を拠出し、漢方生薬の管理や人工栽培拡大を図る。

もう1つは7大戦略産業の1つ、バイオ産業(=バイオ薬品)を飛躍させることだろう。12年3月9日に発表された中国医薬品産業の第12次5カ年計画では、中国の医薬品産業が実力をつけるために、(1)医薬品の供給の8割以上を売上上位20社に集中させ、(2)先進国の品質基準をクリアすることや、(3)研究開発に売上の5%以上を投入すること、(4)50社以上が海外で研究・生産拠点を設置すること、(5)製薬の輸出比率も11年の約3%から10%以上にすること(インドは15%に到達している)、などが目標として掲げられている。これは、09年4月に発表された新医療改革計画の大綱を踏襲したもので、既に一度、医薬品産業には再編の波が訪れている。ただ、それでも6,513社(中国医薬統計網、12年6月時点)も存在する医薬品メーカーの再編は必須である。日本の製薬会社(医薬品製造販売業)の再編では00年度の1,396社が、10年度で376社にまで集約されたこと(厚生労働省『医薬品・医療機器産業実態調査』)と比較すると、設備や資金の規模で余裕がある企業と、バイオの最先端技術を有する企業を吸収合併させた最適化が済んだとは言い難い。

12年1-6月期のM&Aやベンチャーキャピタル、プライベートエクイティ投資では医療・健康産業が上位に挙がっており、直近では8月4日に創業板に上場しているワクチンメーカー・沃森生物が、血液加工製薬会社の河北大安製薬を買収する方針を示した。マッチング情報の提供や買収資金の迅速な融資、優遇税制などを積極的に展開していけば、俄かに再燃しつつある再編機運を無駄にせず、第12次5カ年計画の達成が一歩前進するのではないだろうか。

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