ドイツ、FIT混乱しても目標はゆるがず

2012年6月12日

いよいよ7月1日から日本で再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff)がスタートする。同制度は、電力会社に対して、再生可能エネルギーによる発電電力を一定価格で一定期間買取ることを義務付けた制度であり、再生可能エネルギーの導入拡大が期待されている。すでに第三者委員会による買取価格(※1)が公表されており、多くの企業が新たなビジネスチャンスとして再生可能エネルギー発電事業の準備を進めている。

そのようななか、10年以上前に同制度を導入したドイツでは、制度改定をめぐり混乱が生じている。ドイツは、2000年の同制度開始以降、順当に再生可能エネルギー導入量を増やしており、2010年には全発電量の17%を再生可能エネルギーが占めるまでになった(図1)。ドイツでは、2020年までに全発電量の少なくとも35%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げており、より一層の導入加速が必要とされている。ところが、同制度による電力会社の買取負担は電力料金に転嫁される仕組みであることから、ここにきて転嫁額の急上昇が問題視されるようになった。2009年における電力料金への転嫁額は1.3ユーロセント(ct)/kWh(1.3円/kWh、1ユーロ=100円で換算)であったが、2011年には3.5ct/kWh(3.5円/kWh) となった。2013年には5.3 ct/kWh(5.3円/kWh)になるとの推計もあり、そうなれば電力料金の約20%を占めることになる。太陽光発電に手厚い買取価格が設定されてきたが、2009年以降太陽光発電設備コストが急激に低下し導入が加速したことが原因だ。他の再生可能エネルギーに比べて買取価格の高い太陽光発電は、電力量では10%程度の貢献しかないものの、買取負担額では半分以上を占める結果となっている(図2)。

図1 ドイツにおける再生可能エネルギー発電量の推移
図1 ドイツにおける再生可能エネルギー発電量の推移
出所:Renewable Energy Sources in Figures, BMU(2011)より大和総研作成

図2 FITにより電力料金に転嫁されるコストの内訳(ドイツ、2011年)
図2 FITにより電力料金に転嫁されるコストの内訳(ドイツ、2011年)
出所:BDEW公表資料より大和総研作成

電力料金上昇を危惧し、ドイツでは2012年2月末、太陽光発電の買取価格に関する再生可能エネルギー法の改正案が提出された。その内容は、太陽光発電の買取価格の引き下げ、買取価格の改定頻度の変更(毎月)、大規模太陽光発電(1万kW)の対象除外、買取対象電力量の制限(年間発電量の85%~90%)など。改正案は3月29日に下院で可決されたが、5月11日に上院で否決され調停委員会に委ねられた。その間、駆け込み導入や関連株価の変動などにより市場は混乱した。上院の否決の理由として、再生可能エネルギーの導入目標達成が厳しくなることや、企業の投資計画に悪影響を及ぼし雇用などに影響することなどが挙げられているが、その背景には、太陽光発電関連企業からの要請もあったのだろう。

ドイツの事例は、太陽光発電の買取価格の下落スピードが設備価格の下落スピードに追い付かず、導入が急加速したことが要因である。一度過熱した市場を鎮めるには、関連企業への影響が避けられず混乱が生じる。日本では慎重な価格設定と適時の見直しにより同様の事態を避けなければならないだろう。ただ、ドイツの事例をもって制度そのものを失敗と判断するには早計であり、むしろ、修正しながら高い導入目標を達成しようとする姿勢を見習いたいところだ。

(※1)調達価格及び調達期間は、第三者委員会である調達価格等算定委員会の意見を尊重した上で、経済産業大臣が定めることとなっている。

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