効率化される家計消費~過去30年の年齢階級別消費パターンの変化~

2012年5月1日

前回のコラムでは、現状における世帯主年齢階級別の消費パターンの違いを観察した。今回は、過去約30年(1980年から2011年まで)の間で年齢階級別の消費パターンがどのように変化してきたのかを考察してみたい。ここでは世帯規模を調整するために世帯人員の平方根で除した等価消費に直し、かつ、相対価格の変化を調整した実質ベースの割合をとっている。
 
顕著なのが、この30年程度で家計は食費や被服履物、その他消費支出の割合を大幅に減らしていることである(下図参照)。約30年の間に生活水準が向上してエンゲル係数が低下するのは自然だとしても、食費の消費支出に占める割合は5~10%ポイント減少し、そしておこづかいや交際費などの支出である「その他消費支出」も10%ポイント程度減っている。被服履物はおよそ5%ポイントの減少で、これら合計で消費支出全体の20~25%ポイントもの配分先が変更されたことになる。
 
ではそれらはどの消費項目に振り向けられたのであろうか。消費の配分は、所得水準や相対価格の変化、時代の変化とライフスタイルの多様化などによって変化する。
 
まず、教育費は過去30数年でも世帯あたりの消費配分はそれほど変わっていない。子どの数は減っているが、子ども1人当たりにかける教育費が増加しており、家計消費における教育費のウェイト自体には変化がない。また、少し意外だが、保健医療費の上昇は比較的緩やかである。家計調査では公的医療保険からの給付分は消費として計上されていないから、国民医療費が増えていても家計当たりの患者本人負担は増えていないということだろう。
 
一方、住居費は壮年層や高齢層ではそれほど変化はないが、若年層ではウェイトがかなり増えている。どの年齢階層でも大きく増えているのは交通通信だが、年齢階層によってその内容は異なる。若年層では特に携帯電話通信料でウェイトが大幅に上昇しており、高齢層では自動車等関係費の上昇が目立つ。また、余暇の拡大やライフスタイルの多様化によって、壮年層や高齢層を中心に教養娯楽の支出割合も高まっている。若年層での持ち家志向の低下(家計調査の住居費とは主に家賃である)や、高齢層でも自動車に乗り続けるようになっていることがうかがわれる。
 
注目したいのが、光熱水道費のウェイト上昇だ。中でも家計における電気代の高まりが懸念される。多様な要求を満たし、かつ、利便性・安全性の高い電化製品の価格低下で、高齢者世帯を中心に電化製品の消費額は増えており、それに伴い電気代も上昇している。
 
もっとも、余暇消費のスタイルを大幅に変えたインターネットや携帯電話・スマートフォンの普及によって、できるだけ安価な商品を短時間で見つけ出し、配送サービスを利用して外出しなくても商品を購入できるようになっている。家計は所得環境が厳しい中でもより満足度を高めるために、余計な出費を極力減らす一方、時間や体力を浪費する無償の家事から解放されることを人々は望んでいる。無償の家事労働を減らして賃金を得るために働く時間をできるだけ増やす、限られた予算と時間の中で余暇の楽しみ方をできるだけ充足感のあるものにするという、いわば「家計消費の効率化」が今後も続くだろう。
 
世帯主年齢階級別・家計消費に占める割合(実質ベース)

(注)各消費項目はCPIで実質化。等価消費(世帯人員の平方根で除した消費額)で比較。
(出所)総務省「家計調査」「消費者物価指数」より大和総研作成

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