日銀からの「バレンタインプレゼント」が意味すること

2012年3月26日

2月14日、日本銀行は消費者物価指数で前年比+1%を「中長期的な物価安定の目処」とした。2006年3月に導入された、政策委員会各委員の見解の集合体(数値表現)に過ぎなかった「中長期的な物価安定の理解」から「日本銀行としての判断」として具体的な数値を設定したのである。これは、事実上の「インフレーション・ターゲティング」であると解釈されている。そして日銀総裁は、「それ(+1%)が見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入等の措置により強力に金融緩和を推進する」ことを表明した。更に、「資産買入等の基金」による長期国債の買入れを10兆円程度増額することも決定した。この影響から、日米2年国債利回りスプレッドは拡大し、為替市場では円高圧力に抑制がかかった。さらに日経平均株価は上昇したことから、日銀の金融政策発表は、まさにバレンタインプレゼントと呼ばれたのである。

実際、日銀が明示した金融緩和政策の継続性は、時間軸の強化となった。そして結果的に金融市場の安定化につながったこととなる。時間軸という観点から考察すると、今回の決断は、これまでの金融政策の延長線上に位置していると考えられる。2001年3月から2006年3月まで実施された量的緩和策では、消費者物価指数が前年比でゼロ%以上となるまで資金供給を続けるコミットメントの表明を行っている。この時間軸政策により、無担保コール翌日物レートはほぼゼロ%付近で推移するとともに、長期金利の低下に寄与したと一定の評価を受けている。まさに今回の政策は、その延長線上に位置し、事実上の「インフレーション・ターゲティング」が導入されたことで、時間軸政策が強化された格好となった。

ただし、果たして、「目処」の導入で期待インフレ率は上昇するのか、デフレ脱却となるのか、その点で不透明感は残る。日本銀行の1月の中間評価によると、インフレ率の見通しは、2012年度が+0.1%、2013年度は+0.5%である。従って、当面は「目処」を外れることを意味する。消費者物価指数(総務省)の3ヶ月移動平均を前年比で見ると、過去10年で1%の水準を上回ったのは、資源価格高騰の影響を受けた2008年5月から12月のみである。現時点で、+1%までの距離感を感じる者が大勢であろう。

今回の金融政策は、時間軸政策と超円高をある程度是正することには寄与したが、総需要喚起、デフレ脱却への寄与はまだ不透明といえる。もし、「インフレーション・ターゲティング」を導入することで、中央銀行のコミットメントを明確化し、民間の将来にわたる期待形成に働きかけるのであれば、+1%という、過去の物価動向から見て距離感のある水準を目標と明示しないであろう。日銀からのバレンタインプレゼントは、むしろ、時間軸政策と円高圧力の抑制を狙ったものと推測でき、デフレ脱却により+1%のインフレ目標を達成するという、責任を果たすかどうかを市場は注視している。

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