ニューヨーク情報:返品は文化?

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2012年02月28日

  • 笠原 滝平
ニューヨークへ赴任して3ヶ月が経った。赴任当初は家を決めたり、家具を揃えたり、携帯電話を契約したりと慣れないことが多い上に、言葉の壁もあり苦労した。こうした経験を通して、少しずつではあるが「アメリカ式」が見えてきた。


特に日本との違いを感じたことは消費である。アメリカでの消費は日本と比べて豪快というか、まず買ってみようという傾向があるように感じる。日本では欲しい商品があれば性能などについて事前に調べ、比較し、決断してから買いに行っていた。アメリカでは違う。少し大げさに言えば、欲しい商品があればまず買い、比較する商品も一緒に買い、家で比較・決断してから戻しに行けば良いのである。


つまり、アメリカの消費には「返品・返金」制度が非常に整っているという特徴が挙げられる。そして、この返品・返金制度が力強いアメリカの消費を支えている要因となっているのではないか。


実際、私も店頭でプリンターを購入して持ち帰ったものの動かず、店頭に持っていった。返したい商品とレシートを持っていくだけで、返品の理由もあまり聞かれずに交換するか、返金するか、どちらが良いか選んで欲しいと言われる。

オンラインでコーヒーメーカーを購入した際も、部品が足りなかったので返品をすることにした。オンラインの場合の返品も非常に簡単で、近くの郵便局や宅配業者の支店に商品を持っていけば無料で返品できる。そして購入金額は数日後に使用したクレジットカードを通じて返金される。

また、最近ではクリスマス商戦などでプレゼントを贈るとき、値段が書いていないレシート(ギフトレシート)を一緒に渡すことも増えてきた。これは、プレゼントを受け取った人が商品を気に入らなかった場合、商品とレシートがあれば、交換や返金ができるといったサービスだ。


こうした返品・返金制度の充実はデータとしても確認することができる。全米小売業協会(NRF)のアンケート調査(対象は103社)によると、2011年の予想返品総額は2,000億ドルを超える(2010年の実績は1,900億ドル)。日本円に換算すると16兆円相当が返品されている。販売総額に対する比率でも約9%と、年間で購入した物のうち1割近くを返品していることになる。残念ながら日本と比較可能なデータが無いが、肌感覚でアメリカの返品率の高さを感じることができるだろう。返品率の高さからも、アメリカの返品・返金制度がいかに整っているかを垣間見られる。前述したように不良品と出会うことも多々あるが、こうした土壌がアメリカの消費の力強さを支えていると考えられる。


GDPの需要項目である消費を一つ取ってみても、国によって大きな違いがある。職業柄、データを国際比較することが多いため、土地柄による違いなども考慮する必要性を改めて感じさせられた。

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