節電から省エネへ

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2011年11月14日

東日本大震災の影響やその後の原子力発電所の運転停止により、引き続き全国規模で電力供給不足が問題となっている。今夏に実施された電力使用制限令や自主的な節電の呼びかけによって、今夏のピーク時の電力不足はなんとか回避することができた。しかし問題はこれからで、電力不足は今冬や来夏以降も続くものと予想される。当面は今冬の節電対策が重要となるが、関西電力や九州電力では来るべき冬に備えて、各管内への節電協力を呼びかけている。

一方、今回の節電によって家計や事業所の電気代が大きく下がったというメリットに改めて気付かされた方々も多かったのではないか。冷房温度を上げながら扇風機やサーキュレーターを併用すれば、そこそこ快適に過ごしながらも電気代を大幅に抑えることができる。また白熱電球をLED電球に交換したり、こまめに電気を消したりすることでも、電気代は低下する。如何にこれまで無駄に電気を使っていたのか、電気代を浪費していたのか、改めて感じされられる年でもあった。

夏の暑さを避けるにはエアコンは欠かせないが、冬の寒さ対策にはエアコン以外にも、例えば灯油やガスによるストーブやファンヒーター、床暖房等の多様な選択肢があるため、電気以外のエネルギーをうまく利用して節電することができる。その分、灯油代やガス代にしわ寄せが行くので、今冬は電気だけでなくエネルギー全体の節約(省エネ)が一層意識されるものと思われる。

注意すべき点は、冬には大量のエネルギーを消費するということである。夏には推奨温度28℃にするためには冷房器具で外気温を5℃~6℃下げるだけで良かったが、冬の推奨温度20℃を保つには、暖房器具によって10℃~20℃程度温度を上げる必要がある。よって、冬の光熱費は夏以上に高くなりやすい。

もっとも、最近のエアコンは省エネ技術が格段に進んでいることで、灯油系の暖房器具と変わらないくらいランニングコストが安いものまで出てきてはいる。しかし、今後は電力料金の値上げが予想されるし、灯油代も大きく変動しやすい。そのため、例えば室内の上層部にある暖かい空気をサーキュレーターなどで循環し室内温度の偏りを無くすこと、窓や壁の断熱性を高めること、そして室内でも厚手の衣類を着用するなど、少しの工夫で光熱費が高い冬の出費を抑えることができる。

今後は家計所得や企業収益が伸び悩む中で、税や電力料金の引き上げが予想される。必要なものを削減するのは苦痛だが、本来必要のない余計な出費を抑えることは合理的で望ましい経済行動である。電力に限らず、我々はエネルギー全体の効率的な利用についてももっと真剣に見直してみる必要がある。それがひいては過剰な電力供給コストを避けることにも繋がるのではないか。

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溝端 幹雄
執筆者紹介

経済調査部

主任研究員 溝端 幹雄