偽りの夜明け

2011年8月25日

  • 理事 木村浩一
白川日本銀行総裁は、2年前の講演で(2009年4月23日)、1990年代の日本経済が何回か一時的な回復を示したが、実際には「偽りの夜明け」に終わり、経済の低迷を克服できなかったと指摘している。

先月末発表されたアメリカのGDPの改定値は下方修正され、アメリカの景気が大幅に減速していることを示した。また、リーマン・ショック前のピーク時のGDPを、いまだ回復していないことも明らかになった。アメリカは大規模な財政出動を行い、FRBもゼロ金利と大胆な金融緩和を実施したにもかかわらず、景気回復の影は引き潮のように遠のいていっている。

バブル崩壊後のバランス・シート調整が終わるまでは、企業の設備投資も個人消費も減少し、ゼロ金利政策も金融緩和も景気対策としては効果がなかった。金融機関は、企業の資金需要が伸びず貸出しが低迷したため、国債への投資を増やし、想定外の超低金利が10年以上続いている。そのため、本来破綻すべき「ゾンビ企業」を延命させ、構造調整が遅れた。これが、日本の「失われた10年」の教訓だった。

欧米諸国の先送りされる損失と低金利の長期化による構造調整の遅れは、日本の「失われた10年」の再現を思わせ、既視感(デジャヴュ)を覚える。

アメリカやヨーロッパも、財政問題が深刻化し大規模な財政政策は実施できず、また、バランス・シート調整期は金融政策も効果が乏しい。このように政策的に手詰まりの状況では、政治的には困難であっても病巣にメスを入れ大胆に構造改革を進めていくしかないだろう。アメリカの住宅ローン問題の抜本的処理(特に、ファニーメイとフレディマック)やヨーロッパ周辺諸国の破綻処理など、政治が痛みを伴う改革を決断しなければ、日本が住専問題や銀行の不良債権処理を先延ばし続けた結果陥った「失われた10年」の二の舞になるだろう。

課題の処理を先送りし、時間をかけて解決する対応は、「偽りの夜明け」をみるだけで、実際には状況を悪化させ、長期化させるだけである。政治家、政策当局者は、バランス・シート調整期には時間は味方にはならないことを肝に銘じるべきであろう。

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