海外渡航のすゝめ

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2011年08月01日

  • 笠原 滝平
足下で再び1ドル80円台を切る円高傾向になり、歴史的に非常に高い水準が続いている。一般的に日本のような輸出依存型の経済は円高に弱い。円高になると、コストを減らさずに円建てで同じ利益を得るためには海外での販売価格を上げる必要があり、価格競争力が低下するなどの問題点があるからだ。

そのため最近では為替介入が期待されたり、産業の空洞化の加速が懸念されたりしている。ただし、円高にも悪い側面ばかりではない。最近は輸入価格が抑制できるという話を目にする。大部分を輸入で賄っている資源の価格高騰を円高である程度カバー出来るという話だ。行き過ぎた円高は経済に悪影響を与えるため十分な議論と対策が必要だが、輸入価格抑制のように現状をポジティブに考える努力も必要だと感じている。

そこで本コラムで「すゝめ」たいことは海外渡航だ。大雑把に言えば、為替レートが2倍円高になればその分安く海外へ行ける。平成23年度の経済財政白書では、持続的な成長には人的資本や無形資産への投資が必要だと書かれている。私は海外留学などもその一つで、日本経済が成長するために海外留学生を国内の大学に受け入れることも必要だが、逆に国内の人材を海外で学ばせることも重要だと考えている。OECDのデータによれば、日本から海外への留学生数は年々減少傾向にあり、最新の2008年では5万3,000人弱(2005年は6万3,000人弱)となっている。

足下の円高は短期的に日本経済を下押しする懸念材料となっているが、中長期的な投資のためにチャンスと捉えてはどうか。アメリカの大学院へ留学する際の授業料と生活費を年間5万ドルだと仮定すると、為替レートが比較的安定的に推移した2000年代平均(112.0円)では円建てで約560万円となる。一方で直近のレート(78.0円を想定)では約390万円と1年当たり170万円程度安く留学出来ることになる。もちろん安くなったとは言え高水準のコストで、機会費用などを含めると更に高くなるが、人的資本を高めることは将来的にプラスに働くはずである。

苦しいときにこそポジティブに考え、明るい未来を描くべきではないか。

ドル円レールの推移

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