中国の人口減少の波紋

2011年6月2日

  • 理事 木村浩一
社会の少子高齢化への対応は我が国の最重要課題の1つだが、隣国中国もまた少子高齢化が急速に進んでいる。

中国問題の専門家の津上俊哉氏の新著「岐路に立つ中国――超大国を待つ7つの壁」(2011年2月、日本経済新聞出版社刊)によると、中国の公式の出生率は1.8と発表されているが、実際には1.22(2000年)、1.33(2005年)にまで急減しているとの研究が発表され波紋を呼んでいる、という。この研究が正しいとすれば、中国の人口は13億人をピークに2016年から減少を始める、という。

そして、津上氏は同著の中で、「人口が2015年頃にピークアウトし、その後は成長率が漸減していく可能性がある。…(中略)…中国の経済成長率は遅くとも2020年までにはピークアウトして低下していくだろう。」、「中国がGDPで米国を抜き、「チャイナ・アズ・ナンバーワン」になる可能性は、向こう10年、20年といった近未来にはなさそうだ。楽観的に言っても、この勝負は中国が高齢化の衝撃をくぐり抜ける21世紀後半に持ち越されるだろう。」と、予測している。

今年4月28日、中国の国勢調査の結果が発表され、1人っ子政策もあり、出生率が従来の公式統計を大きく下回る1.4となり、津上氏の著書を裏付ける結果となった。

また、国連が2年おきに発表している世界人口推計の2010年版が5月3日に発表され、中国の人口は2025年頃に13.9億人に増加後減少し、2050年12.9億人、2100年9.4億人になると予測している。

しかし、国連の予測は、標準シナリオの他に、出生率がメインシナリオより0.5高いケースと0.5低いケースの3つのシナリオを同時に発表している。メインシナリオの想定している出生率は、2010~2030年1.5台、2030年代1.6台、2040年以降1.7~2.0となっている一方、出生率の低いシナリオでは、2010~2015年1.31、2015~2040年1.03~1.18となっており、4月に発表された中国の国勢調査をみれば、今後は国連予測の中で出生率の低いシナリオに近い形で推移する可能性が高いのではないかと思う。

低出生率の場合、中国の将来人口は、標準シナリオと比べ10年早く2015年頃に人口のピークをつけた後、2050年に11.3億人、2100年には5.0億人にまで減少する、と国連のデータは予測している。65歳以上の人口の全人口に占める割合は、2010年8.2%から2050年に約30%、2070年約40%に達し、速いスピードで高齢化が進んでいく。

中国は、2000年代の驚異的な経済成長とリーマン・ショック時の積極果敢な対応により、G2と呼ばれアメリカに対抗する国家にまで世界的位置づけを高めた。昨年日本を抜きGDPで世界2位となり、10年後にはアメリカを抜くとも言われているなど、急速な経済成長による勢いとアメリカの3億人に対する13億人という人口上の優位が、かつての米ソ関係と異なった位置づけを現在の米中関係に与えている。

しかし、中国が、津上氏の著書や国連の悲観シナリオのように急速に少子高齢化が進んでいくとすれば、別の観方が必要だろう。1人当たりGDPが4000ドル台で国民の豊かさが十分でない中で、高齢化が急速に進むため、中国は、早い段階で相当の国力を年金、医療等の社会保障に注力する必要がでてくる。

一方、アメリカは、先進国にあって異例に出生率が高く、人口増加が続いている国だが、同じ国連の世界人口推計によれば、現在の出生率が続くと仮定する標準シナリオの場合、アメリカの人口は2050年に4.0億人、2100年4.8億人に達し、2100年にはアメリカと中国の人口はほぼ並ぶことになる。経済力、軍事力、政治力などが1国のパワーの源泉だが、人口の多寡もその1要素となる(例えば、兵員調達力)。

中国が少子高齢化を止められなければ、2100年の世界は、若いアメリカ(2100年の平均年齢43.2歳:国連の世界人口推計による)と高齢化に苦しむ中国(同56.5歳:同推計による)という、現在からは想像しにくい世界になっているかもしれない。

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