累積赤字は世代「内」格差の問題にもなる

2010年11月24日

年末に向けて、2011年度の税制改正案・予算案の作成作業が進んでいる。2010年度予算では公債発行額が税収を上回り、財政は危機的状況にある。2011年度予算ではどこまで歳出を削減できるか、また税収を回復させることができるかが注目される。

財政赤字はいつまでも膨らませ続けることはできず、将来的には増税や社会保険料の引き上げによって赤字を解消しなければならない。その税負担を担うのは、主に若年世代(もしくはこれから生まれる世代)ということとなる。

世代ごとに、税・社会保障により国から受ける利益と、税・社会保険料として国に支払う負担を計算すると、現在高齢者である世代は、少ない税・社会保険料負担で多額の年金・医療などのサービスを受けることができ、大幅な受け取り超過となっている。一方、若年世代・これから生まれる世代は大幅な支払い超過となる。その差は「孫は祖父より1億円損をする」(※1)とまでいわれ、これが「世代間格差」として問題視される。

では、若年世代は、過去の世代が残した巨大な借金を背負って、税・社会保険料という形で支払わなければならない「かわいそうな人たち」になるのだろうか?

実は、必ずしもそうではない。若年世代は、重い税や社会保険料負担を背負うとしても、その一方で高齢者世代から遺産を相続することが期待できるからだ。

現在の高齢者世代は税・社会保障の大幅な受け取り超過が大きな要因となって、約900兆円もの金融資産を保有している(※2)。この金額は、日本政府が抱える累積債務残高の909兆円(※3)とほぼ一致する。

もし仮に、高齢者世代が現在保有している約900兆円の金融資産を若年世代に遺産として遺してくれたとしたら、若年世代はその遺産で累積赤字を返すことができ、実質的な負担はほぼプラスマイナスゼロということになる。高齢者世代から引き継ぐことができる遺産を考慮すると、若年世代全体でみれば、重税に苦しむばかりの「かわいそうな人たち」とはいえない。

しかし、若年世代内の個々人をみてみると、事情は異なる。

実際に自分の親が遺してくれる遺産の額(すなわち個々人が受け取れる遺産の額)は、人によって大きな格差が出てくる。その一方で、所得税や消費税、社会保険料などについては個々人が親から受け取った遺産の額とは関係なく徴収されることになる(※4)

すなわち、若年世代内でも、高い税・社会保険料負担を親から受け取った遺産と相殺できる(またはお釣りがくる)者と、親から遺産を受け取れず高い税・社会保険料負担をそのまま被らなければならない者に分かれることになる。

拡大する累積赤字は「世代間格差」だけでなく、将来において「世代内格差」も生んでしまうのである。

(※1)新書のタイトルである。島崎諭・山下努「孫は祖父より1億円損をする~世代会計が示す格差・日本」朝日新書
(※2)2人以上世帯の家計貯蓄額の60.7%を「世帯主が60歳以上の世帯」が占めている(総務省「家計調査(貯蓄・負債編)2009年」より)。家計金融資産を1,457兆円(日本銀行「資金循環統計(2010年3月末)」より)の60.7%は、884兆円であり、高齢者世代は約900兆円の金融資産を保有していると推計される。
(※3)財務省「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(2010年9月末現在)」より
(※4)高率な相続税を課して、その税収を財政赤字の縮小に充てれば、「世代内格差」を緩和することが可能になる。

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