ギリシャ問題から中東欧危機を振り返る

2010年3月29日

現在、ギリシャの財政赤字問題がユーロ圏を大きく揺るがしている。ユーロ加盟国は、特定の中央政府の窮状救済に対する責任を負わない「非救済条項」が適用されるため、他のユーロ圏構成国も安易に救済に走れないのが現実である。

1年前、欧州の地雷原と言われたのが中東欧諸国であった。経済・金融構造上、同地域は西欧に大きく依存している。そのため中東欧地域の肥大化したリスクが、西欧へ飛び火するのではないかと論じられた。例えば、同地域の金融セクター資産に占める欧州系銀行資産の割合は非常に高く、それら欧州系銀行が同地域から資本を過剰なまでに引き揚げるのではないかとの懸念が生じた。

こうした懸念の背景には、ユーロ導入を果たせていないという点で、中東欧地域のEU統合が「未完成」な状態であったことが挙げられる。同地域は、財政問題などが原因で未だユーロ導入基準を満たしていない。経済・金融分野で西欧との接点が多い一方で、そのようなリスクを抱える同地域は、セキュリティーホールとして捉えられ始めた。

しかしそのセキュリティーホールに対する欧州政策当局の対応は非常に迅速であった。09年2月には、欧州開発銀行、欧州投資銀行、世界銀行による245億ユーロにも上る共同資金援助が決定。またあまり広く知られていない金融危機対策に、ウィーンイニシアチブと呼ばれるものがある。国際金融機関の他、各国中央銀行総裁や、中東欧地域に展開する欧州系銀行の代表者が各国に集結し、金融セクターの現状把握と、支店や現地の傘下銀行に対するファイナンスなどといった今後の方針を議論した。さらに同地域へのエクスポージャーを維持することを確認し合った。これにより西欧系銀行は、競合他社の資本引き揚げリスクを気にかける必要性が低下し、囚人のジレンマを回避。その結果、ウィーンイニシアチブを締結した中東欧諸国(ハンガリーなど)への欧州銀行による与信残高は、09年3月を底に再び増加している。

中東欧の危機下では、欧州・国レベルでの当局者や「民」を代表する銀行による、セキュリティーホールの封じ込めが早い段階で講じられ、それが功を奏した。同地域は、欧州系銀行への過度な依存が懸念材料となっていたが、むしろ欧州系銀行の存在こそが危機のバッファーとしての役割をある程度果たしたとも言えるだろう。ケースは異なるが、振り返れば中東欧の場合、その対応の迅速さという点で、ある程度ギリシャとのコントラストを成している。その要因は、中東欧地域が非ユーロ加盟国であり、EUからの公式な支援の承認を得ることが可能であったからである。もちろんギリシャの件は、統一通貨・統一中央銀行のもとでの巨額の財政赤字など、中東欧の問題と性質が異なるため、解決に時間を要するのは理解できる。ユーロ圏は今、圏内の安定とモラルハザード防止の狭間にある。

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