2010年度に想定される株式需給の転換点

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2010年03月23日

  • 土屋 貴裕
2010年度の国内勢は、個人等の逆バリ・プレイヤーか、銀行等の構造的な売り主体のどちらかに二分され、上値を追う可能性があるのは外国人中心と考えられよう。
その外国人動向だが、ここ2~3年の日本を含むアジアの各株式市場における外国人売買動向は、買い越し基調か売り越し基調なのか、という売買の方向性は各市場共に概ね似通っていた。買い越し(売り越し)の程度については、各国の経済成長(回復)のペースに応じて異なってきたと見られる。当面の世界経済は緩やかな回復が想定されており、「ドバイ・ショック」のようなイベント発生のリスクは残るものの、日本市場においても、外国人の買いトレンドが続くと期待したい。
再びアジア各国の市場の話題に戻ると、買い越し基調の中にあっても、例えば、台湾株の買いが膨らんだのは、中台間のFTA交渉が進むと報道があった時、韓国株の場合は中国の家電下郷が拡大すると伝えられた時などであった。同じく、日銀が追加緩和を模索するとの報道で大幅に株価が上昇したように、外国人投資家の売買は、政策等のイベントによって変化が生じると想定される。経済の回復が内外の政策に依存している以上、半ば当然であるとも言えよう。
日本で2010年度に予定されている大きなイベントとしては、7月予定の参院選が挙げられる。参院選そのものよりも、その少し前に、選挙対策という意味を含めて政策等の評価すべき事項が複数出てきそうであり、5月から6月前半にかけての時期が焦点となろう。企業の3月期決算発表は当然だが、選挙を前に日本経済の成長戦略や、年金等の改革案がより具体的に表れてくるのではないか。各党のマニフェストや2011年度予算の概算要求も話題に上ることになり、前向きに評価される中身であれば、日本経済・企業の回復期待からの外国人買いが上積みされることが期待できよう。

もう一つの政策として金融政策があるが、内外において動意がありそうだ。
海外中銀の出口戦略としては、資源国のほか新興国において、年前半からの利上げが取り沙汰されている。そして、中国の人民元の切り上げは、前回、2005年の切り上げは7月であったことから、やはり5~6月に話題の俎上に上ってくるのではないだろうか。海外中銀の出口戦略は、当初は世界経済の回復を阻害するものとしてネガティブに捉えられるとしても、持続的な経済成長に必要な措置であると認識されるようになれば、さらなる景気回復期待が生じ、また内外金利差の拡大等を通じて円の実効レートの円安につながることが期待される。対する日銀にはさらなる追加緩和の期待があり、金融緩和策の積み増しは、円安を通じた外国人買いの積み増しにつながると想定され得るだろう。

秋以降になると、FRB等の主要中銀の出口戦略や、世界的な金融規制が具体的に論議されてくる可能性があろう。バーゼル委員会による新たな金融規制は年末までの策定が予定されているが、11月中に予定されているG20サミットが、規制の方針が明確になる一つのメドと考えられる。規制の内容が厳しくなると見られれば、「ボルカー・ルール」案が表明された時のように、日本のみならず各国株式が売られる可能性が出てくることになろう。

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