ファイナンスの増加と国際資金フロー

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2009年10月07日

  • 土屋 貴裕
株式の需給面を巡る2009年度上期の特徴は、外国人の売り越し一辺倒が終息したことと、エクイティ・ファイナンスの増加が目立ったことだろう。

エクイティ・ファイナンスについては、6月は単月ではおそらくバブル後最大の資金調達となったが、マーケットの波乱要因とはならなかった。4月から8月までのファイナンスの合計額で見ると、「売出し」が限定的で市場からの資金吸収額が極端に膨らまなかったことと、増資を外国人や個人が積極的に引き受けたことなどが、大きな波乱にならなかった背景だろう。
2006年度の「売出」は内外合わせて4.4兆円だが、09年度8月分までの合計はわずか2,000億円余りである。また、8月までの公募増資額は2.2兆円に達するが、うち海外分が9,500億円で、海外分の増資額を過去の年度合計額と比べると、バブル後の最高を更新した模様である。
だが、秋以降に再び、エクイティ・ファイナンスが膨らむ季節を迎える。
秋は外国人主導で株価に波乱が生じやすい。季節性以外にも、外国人のリスク資産買戻しがある程度進み、米住宅市場の改善も一服する可能性などから、外国人買いが失速し、足踏みするリスクがある。国内勢に目立った買い主体が見あたらないなかで、需給バランスが崩れる恐れがある。

ただし、為替が円安に振れたりアジア株等が上昇するなど、外部要因によるリバランス・ニーズによる売買は別途あり得るだろう。
金融危機後の日米の資金フローを確認すると、銀行等による貸付の大規模回収という危機的状況は一服した。貸付回収の終焉は日米同じであり、日本からは債券投資中心、米国からは株式投資中心という、対外証券投資フローも平時に回帰しつつある。株式投資に限ると、アジア向けの株式投資が増えている。投資金額の増加のほか、地域合計での時価総額対比でも投資規模は大きい。アジア株の上昇が維持されるのであれば、出遅れる日本株もリバランスの対象として見直されることにつながる。

外部要因にかかわらず、再び外国人投資家の買いが膨らむとすれば、新政権の経済政策如何となろう。最近の景気回復は、日本を含め各国の財政支出に支えられている面があるためだ。10月25日の参院補選後の臨時国会召集が有力視され、来年度予算の編成時期を迎える。軋轢を生みかねない予算配分の見直しを円滑に成功させるのであれば、「変革期待」と「政権の安定」の両者を共に印象付けることになる。外国において期初となる年初において、日本市場の見直しが進むきっかけとなろう。

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