世界同時不況に誰がした?

2009年2月26日

昨年後半から足もとの様相は“世界同時不況”であるという言い方に疑問を挟む余地はないだろう。そして、サブプライムローン問題に端を発した米国の金融危機が世界中を駆け巡り、実体経済に悪影響を及ぼしているという見方もコンセンサスかもしれない。実際、米国の2008年Q4の実質GDP成長率(速報値)は前期比1.0%減とQ3に続くマイナス成長となり、1982年Q1以来約27年ぶりの大幅な落ち込みになった。

では、悪の元凶である米国が世界で最も低成長なのか。OECDの発表(2/18)をみると、2008年Q4のOECD加盟国全体の成長率(一部OECD推計を含む)は1.5%減と、1960年の調査開始以来最大のマイナスとなった。だが、日本3.3%減、ユーロ圏1.5%減、英1.5%減、韓国5.6%減等と米国を上回る悪化を示しており、G7諸国のなかでは米国が最もマシだ。また、米国が他より先行して悪化していたかというと、Q3も相対的にマイナス幅は小さく、日本やユーロ圏に至っては3四半期連続のマイナス成長である。従って、リセッションとはいえ、米国の2008年の成長率は他の先進国よりも高かった。

昨年来、市場コンセンサスをリードする形で、米国を始めとする世界景気の見方を引き下げてきたIMFは、1月末に今年の世界全体の成長率を昨年11月時点の+2.2%から+0.5%と、戦後最低の伸び率になると大幅に予想を下方修正した。早くも、ストロスカーンIMF専務理事は再度引き下げる必要があるかもしれないと述べているようだが(報道ベース)、少なくとも1月時点では、米国は他の先進国よりも2009年の落込みが小さく、2010年の回復力は強いという予想になっていた。なお、過去のIMFによる予想の変遷を示したのが次のグラフであるが、2005-06年を除くと、非常にボラタイルといえよう。2002-03年(あるいは2008年)のようにV字を描いたケースもあった。

IMFの、米国:実質GDP成長率予想の変遷

もし米国だけが困難を抱えていたならば、長期的な成長力、競争力の相対的な位置付けは大きく低下したであろう。だが、幸いなことに、今は世界同時不況である。本当に効率的な内容か、あるいは財政赤字の拡大といった政策発動に伴う副作用を十分に検討していない懸念はあるが、打ち出される財政・金融政策の内容やスピードは、他の国を凌駕している。しかも、今のところ、就任したばかりのオバマ大統領に対する国民の支持率は高く、当局としては様々な政策を実施しやすい環境にある。元々潜在成長力の高い米国の相対的な優位性は、今年、来年とも変わらないとみられる。しかしながら、それはあくまでも財政・金融政策の十分過ぎるサポートのおかげであり、企業や家計の積極的な行動による自律回復ではない点に留意すべきであろう。バーナンキFRB議長も、上ブレリスクよりも下ブレリスクが大きいと議会証言(2/24)で指摘している。リスクの一つが世界経済の鈍化であり、米国の輸出や金融環境が予想以上に悪影響を受ける可能性があるという(もう一つのリスクは、弱体化した経済と金融が相互に反応する、負のスパイラル)。

決して米国を賛美しているつもりはない。ただ、機能不全で何も進まない某国に失望し、オバマ大統領の施政方針演説に熱狂する米国民が羨ましいだけである。果たして、現在の首相や野党代表の演説を聴いて、8割以上の国民が今後について楽観的になれるだろうか。

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