上海の地下鉄にみるハードとソフト

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2009年02月18日

  • 大村 岳雄

2月初旬に、7年ぶりに上海を訪れる機会を得た。
世界景気の停滞の影響をどの程度受けているのかと心配していたが、新興開発地域である浦東地区では朝7時からビル建設現場の槌(つち)音が鳴り響き、市内中心部を走る地下鉄は混雑していた。1月末からの春節、いわゆる旧正月明けだったため街には飾りつけが残され、上海市中心に位置する人民広場駅周辺のショッピングモールはバーゲン客で賑わっていた。
上海市の都市計画博物館では、2010年開催予定の上海万博を控えて会場全景や主要参加国のパビリオンについて1フロアーを使って展示するなど発展への勢いを感じた。

今回の訪問では、都市の軌道交通として発展著しい地下鉄を利用してみた。
現在、上海市には8つの路線があり、市内を南北に走る1号線、東西に走る2号線、環状の4号線などがその中心で、全部で200近くの駅がある。市内中心部は地下駅だが郊外は高架駅となっている。車両は、ドイツ製かフランス製の6両編成で、ツルツルの座席に車内の真ん中につかまる棒が等間隔に設置されていた。日本のように車内の壁面や中吊りに広告は無いが、広告入りの吊り革(プラスチック製)や壁面に液晶モニターの付いている路線もあった。駅には画像式タッチパネルの自動券売機が設置され、日本のテレホンカードのような磁気カードの切符(リサイクル可能なカード)を購入することができた。

印象が良かったのは、路線名が番号で表示されているため位置が分かり易く、自動券売機などで目的駅を探すのにも便利であったこと。主要路線ではホームが幅広く取られており、天井からモニターを下げている駅ではそのモニターを通じて次の電車の到着予定時刻を確認できることである。
しかし一方で、紙幣利用が可能なはずの券売機が紙幣を受付なかったり、故障中の機械も多かった。車内ドア上に貼られたその路線の路線図は同方向で印刷されたものが両側のドアに貼られているため片方は進行方向と逆方向となり見難かった。駅の乗降客のマナーもまだこれからで、直ぐに乗り込もうとする客と降りようとする客が掴みあいになる場面にも遭遇した。

ビル関係の専門家に話を伺ったところ、上海市には超高層と定義される50メートル以上のビルが約4700棟(日本は全国でも60メートル以上のビルが約2000棟)あるが、中国製のビルは寿命が短く10年程度とのことであった。
インフラ整備の場合、後発となると最新の技術や設備など進んだハード面を取り入れられるというメリットを享受できるが、運用や維持管理などソフト面でのケアを考慮しておく必要があるのではないかと感じた。

アンカーとして期待される中国経済であるが、ソフト面にもチャンスがあるのではないだろうか。

4号線 宜山路駅ホーム

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