少数株主のスクィーズアウトを巡る東京高裁の決定について

2008年9月17日

2008年9月12日、MBOに伴う少数株主のスクィーズアウトに関する司法判断が東京高裁で下された。即ち、MBOに当って実施された少数株主のスクィーズアウト(強制現金化)の価格(厳密には普通株と交換に交付された全部取得条項付株式の取得価格)を不満として株主が訴えた裁判において、東京高裁は、会社側の主張を認めた原審(東京地裁)の判断を覆し、株主からの買取価格を引き上げるように命じる決定を行った。

筆者は、個別案件に対する司法判断の妥当性についてはコメントできる立場にないが、M&A全般という観点からは特に次の点が重要だと思われる。まず、最近、M&Aにおける少数株主のスクィーズアウトの手段として利用されることが多い全部取得条項付株式の取得価格について争いが生じた場合、「裁判所の合理的な裁量に委ねたものと解する」という立場が明確にされた。その上で、算定根拠についての適切な立証等がない限り、実務慣行を踏まえて「(公開買付公表日の)直前日からさかのぼって6か月間の市場株価を単純平均することによって、本件取得日における本件株式の客観的価値を算定」し、それにプレミアムとして「20パーセントを加算した額」が妥当な取得価格であるとして、具体的な算定式にまで踏み込んだ判断を下した。

もちろん、この案件については、MBOの発表前に業績の下方修正が行われたことや、裁判において価格についての鑑定手続が行われなかったことといった個別事情が影響していることは間違いない。その意味では「6か月平均株価+20%相当のプレミアム」という算式だけを一人歩きさせることは必ずしも適切ではないだろう。しかし、(鑑定手続が行われない中で)裁判所が具体的な算定式にまで踏み込んで判断したという事実は、M&Aの実務においては重たく受けとめられるだろう。受けとめられ方の方向性としては、二つ考えられる。まず、少数株主のスクィーズアウトを伴うM&Aは「6か月平均株価+20%相当のプレミアム」を下回る価格では(高度な説明責任を果たせない限り)実施しにくくなるという受けとめ方である。もう一つは、「6か月平均株価+20%相当のプレミアム」という一応の基準が示されたことで、少数株主のスクィーズアウトを行う場合の予見可能性が高まるという受けとめ方である。

いずれにせよ、もし、今回の司法判断が確定すれば、大きな影響をM&Aの実務に及ぼすように思われる。

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