資源・食品価格高騰で注目されるM&A

~市場競争は利益を生み出せるか~

2008年8月26日

世界経済はこれまで、市場メカニズムを活用した財・サービスや資金取引を拡大させてきた。今後もこうした市場メカニズムが適用される範囲は益々広がるものと思われる。一方で、当事者が交渉により価格や数量などの取引条件を決める相対取引も、近年のM&Aなどで加速する場面も見られる。というのは、M&Aを行う企業の動機として、最近の資源価格高騰や国際競争の高まりに対する懸念から、市場での交渉力を高めるために行われているからである。

一般に、市場で追加的な利潤獲得機会が存在する時、そこに新たな企業が参入することで得られる利潤獲得機会は失われていき、市場は次第に成熟化していく。こうした市場競争は可能な限り販売価格を引き下げる圧力を企業に与えることになるので、企業は無駄な資源の利用を削減し、また消費者もより安い商品を購入できるようになるといったメリットがある。

しかし、企業は利潤を高めていくことが重要なので、一層の生産コストの削減を行うか、もしくは他の企業と差別化した製品を作るとか自社のブランドを高めるといった、販売価格の低下を出来るだけ阻止するような戦略を取る。このようにして一層の利潤の獲得を目指すことが、現実の企業にとっては合理的である。さらに、M&Aにより市場でのシェアが拡大すれば、企業は製品の販売や原材料の購入において市場への影響力を高めることができるので、自社にとって有利に交渉を進めることができる。そのため、現在のような市場競争が激しく、価格低下やコスト削減の余地が限られるときには、企業はM&Aにより価格交渉力を高めるインセンティブが増すものと考えられる。こうした非市場化への動きは、企業本来の目的からするとごく自然なものである。

実際、今年に入って世界全体のM&Aは、サブプライム問題の影響で資金調達が難しくなり、ファンドや不動産関連のM&Aを中心に減少傾向にある。しかし、資源や食品の価格上昇に伴って、むしろエネルギー・電力や食品といった分野でのM&Aは堅調である。特に、食品分野でのM&Aの急増は、これまでにない新しい動きとして注目される。

但し、M&Aは非効率を生み出すというデメリットもある。企業を買収することで組織が肥大化し、企業統治がうまく働かない可能性がある。また単純に、市場競争によるコスト削減メリットが失われることも考えられる。こうした点を踏まえると、ある程度品質が確立されているような汎用品は市場取引を活用することでコスト削減のメリットが大きいものの、高い技術を要する高付加価値品では、たとえM&Aのデメリットを考慮しても、企業買収により互いの技術力や開発力を補完しあうメリットが上回るものと考えられる。近年、医療関連分野(ヘルスケア)でのM&Aが増加しつつあるのは、後者のようなメリットも踏まえた上での動きであると考えられる。

市場化の流れは、経済の効率化を図り無駄をなくす上で、引き続き大きな貢献を果たしていくことは確かである。しかし、M&Aのような非市場化がもたらす影響について考えることも、今後の重要な論点になるものと思われる。

 世界のM&A上位ランキング(業種別)
(単位:億米ドル)
世界のM&A上位ランキング(業種別)
 
(出所)Thomson Reutersより大和総研資本市場調査部作成
(注)*08年は8月21日までにM&Aの対象となった業種について集計。
データは全て公表ベース。

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