社会保障改革は雇用者と企業の対立ではなく給付効率化

2008年6月25日

政府に設置された社会保障国民会議が、6月19日に中間報告をまとめた。中間報告を読むと、制度を無駄のない効率的なものにすることが述べられつつも、どちらかといえば、社会保障の機能を強化するための財源確保(国民負担)の必要性が強調されている印象を受ける。財源問題で金額が大きいのは、いうまでもなく高齢者向けの年金や医療である。

誰にでも高齢期はあり、多くの現役層は引退した親・先輩世代の生活が潤いあるものであってほしいと願っている。しかし、現在の社会保障には無視できない世代間不公平があり、また、近年は生活水準の低下が年金生活者ではなく現役層でみられている。社会保障の政策運営は人々の制度に対する信頼を低下させ、さらには政府財政悪化の最大の要因にもなってしまっている。

少子化が進行し、また、現在が財政再建期であることを踏まえれば、年金・医療保険の改革は給付の抑制が基本だろう。5月19日に同会議の分科会で議論されたシミュレーションでは、基礎年金全額を税方式化する案について、保険料納付実績を全く考慮しないで(未納者にも)満額給付を行う試算や、導入済みのマクロ経済スライドを行わない試算が紙幅を割いて示されている。それらは、高まる消費税論議に便乗した給付焼け太りか、税率の大幅引上げ提示による改革棚上論にみえはしないだろうか。

年金をどの程度税方式化するのが望ましいかは別にして、給付総額が同一の前提であれば、税方式化が国民全体の負担増を招くわけではないはずだ。給付の内容や水準をどう見直すかと、財源を保険料と税でどう負担すべきかを、区別しなければならない。現役世代の活力の維持・強化が社会保障を支える基盤であると中間報告も述べているように、それでなくとも増加する負担を、現役層や企業が納得して引き受けていける給付効率化が求められる。

もちろん、制度を修正すれば個々には負担増減が生じる。基礎年金全額を消費税で賄うと、企業の保険料負担が3~4兆円減る点を批判する論者は多い。だが一点だけ述べると、年金受給権を得るための雇主負担保険料を含む賃金が労働を提供している対価だとすれば、雇主負担の引下げは、それを除く部分の賃上げ圧力になるのではないか。あるいは、雇主負担を減らしても労働供給に変化がないなら、労働コストの低下で雇用が改善するかもしれない。年金財源として消費税率を引き上げて消費者物価が上昇するとき、将来に年金を受給するための費用を含む現役家計の実質所得が縮小したのでは、消費需要が底割れして雇用者と企業が共倒れになりかねない。

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