買収目的会社(SPAC)の利点と弱点

2008年6月17日

5月下旬に東証は「未公開会社の買収を目的として設立される特別な事業形態の会社」の上場を検討することを明らかにした。これは米国の買収目的専門会社“Special Purpose Acquisition Company:SPAC”を念頭においたものだが、果たして日本に馴染むのだろうか。

SPACの株式公開(IPO)は昨年米国において大ブレイクした。サブプライム問題で疲弊した米国市場の中において比較的熱気が続いた分野で、昨年の米国IPO案件のうち4分の1近くを占めるに至っている。大手投資銀行が一斉に注力したため、現在の市場は消化不良に陥っているが、これまで上場を認めてこなかったニューヨーク証券取引所やNASDAQ市場が次々に上場を容認するなど、米国市場においてSPACの存在感は確実に高まっている。

SPACは、まず事業計画が全く白紙の状態で資金を集めて上場する。その後、買収先(通常1社)を見つけて買収を完了するとSPACとしての役割を終え、名実共に相手の会社に変わってしまう。“Blank Check Company(白紙小切手会社)”とも呼ばれ、一見すると非常にリスクの高そうな投資である。かつては、米国でも詐欺的行為の温床になったこともあるが、その後に投資家保護の規制が導入され、投資家にとってはダウンサイドリスクが限定された投資に変わっている。最近のSPACは一段と投資家寄りの仕組みを導入しており、魅力ある投資手段に変貌しているのである。

SPACの利点としては、(1)投資家にとってはIPOの払込金のほとんどが信託勘定に預託され、買収が失敗したら大半は返還されること、(2)プライベート・エクイティ(PE)とは異なり、比較的小口の資金で未公開株投資に参加でき、途中売却も可能なこと、(3)SPACの設立者は買収に失敗したら自らの投資資金を放棄することになっており、利害の一致が図られていること、などが挙げられる。

一方、弱点としては、(1)買収完了までの期限が定められている上に、買収には株主総会での承認が必要なことから、買収が成功しないリスクが少なからずあること、(2)好条件の買収に成功するかどうかは設立者の能力次第であること、などが挙げられよう。

では、こうしたSPACを日本に導入するにあたっての問題は何か。そもそも、日本ではPEファンド投資も一般化していない中で、どれだけの資金が集められるか不透明である。また、経験・能力があり投資家を惹きつけられる設立者が現れるかどうかもわからない。ただ、仮に市場が立ち上がれば、小口投資家に新たな投資機会を与える魅力ある存在になる可能性はあるだろう。

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