上場契約違約金(制裁金)の導入について

2008年6月4日

2008年4月28日、東京証券取引所(以下、東証)は「上場制度総合整備プログラム2007(第二次実施事項)に基づく上場制度の整備等について」を発表した。この中で、東証は、上場会社に対する制裁金制度、即ち「上場契約違約金」を、2008年7月を目途に導入することとしている。

上場契約違約金とは、上場廃止にしなければならないほどの重大性はないが、株主・投資家の信頼を毀損した上場会社に対して、東証が課す金銭的な制裁措置である。具体的には、次の(1)(2)のいずれにも該当する上場会社に対して、1,000万円を課すことが予定されている。

(1)適時開示義務や企業行動規範に違反するなど上場規則に違反した。
(2)市場や上場会社一般に対する株主・投資家の信頼を毀損したと認められる

こうした上場契約違約金の導入については、批判的な者も多い。確かに、上場会社に上場契約違約金が課された場合、その負担は、(配当の原資である)分配可能額の減少などを通じて、最終的にはその会社の株主に転嫁される危険性があることは事実である。

それに、そもそも全ての上場会社が、いわゆる「ノーブレス・オブリージュ」に従い、自主的・自律的に市場や株主・投資家の信頼を損なうような行いを慎み、「上場」というステータスに相応しい行動を常に心がけているというのであれば、本来、実力行使を伴う制裁自体不要なはずである。「市場の信頼を一度失ったら生き残ることはできない。レピュテーションの喪失こそが唯一・絶対の制裁である。」というのが理想的な市場規律のあり方だという議論については、筆者も異論はない。

しかし、現実に目を向けると「上場」に対する社会的信用を毀損するような事例が跡を絶たないことは周知の通りである。最近でも、虚偽の情報開示や、取引所の警告にも関わらず株式併合や大規模な新株予約権等の第三者割当を実施するなどといった事例があったことは記憶にも新しい。残念ながら、株主・投資家の信頼を裏切る「不心得者」が次々に現れることを前提に、実力行使を伴う制裁を準備しておくことが欠かせないというのが現実なのである。

性悪説に立たざるを得ないというのは心情的にさびしい限りだが、制裁手段の多様化を通じて市場規律が徹底され、東証市場の信頼性が高まることを期待したい。

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