公認会計士のインサイダー取引疑惑に思う!

2008年3月5日

株式市場が低迷する中、また、頭を抱えたくなるような事件が発生した。公認会計士によるインサイダー取引疑惑である。証券市場は、投資家に公正に情報が提供されることを前提としている。そのために企業の決算が適正なものかチェックを行うのが公認会計士の役割である。その公認会計士が不正な行為に手を染めていたというのであれば、資本市場の根底を揺るがす大事件である。

公認会計士によるインサイダー取引の規制に関しては、金融商品取引法以上に特段の定めがあるわけではない。日本公認会計士協会では、監査対象会社の株式所有を倫理規則で禁じているが、これは監査の独立性維持のための規則であり、インサイダー取引防止を主眼とした規則ではない。確かにインサイダー取引を行わないことは公認会計士として当然の前提であり、協会がいちいち詳細な規則を設けるような話ではなかったのかもしれない。

報道によれば、疑惑の取引を行った当の本人は、ことの重大さをほとんど認識していないという。事実を確認し次第厳罰に処して欲しいところである。しかし、公認会計士法によれば、日本公認会計士協会が公認会計士の登録抹消を行わなければならないのは禁錮以上の刑に処せられた場合である。今回の処分が、課徴金に留まる場合は、残念ながら、登録の抹消までは難しいのではないかと思われる。公認会計士については、監査を適正に行うことに重点を置いて規則が定められているが、この件を契機に、公認会計士を他の投資家よりも企業の内部情報に容易にアクセスできる者として再認識し、規制のあり方を見直す必要があるかもしれない。

それにしても昨今は、株主を軽視する行為が目立つ。例えば、特定のファンドを対象に大幅なCB発行を決定しながら、そのファンドから払い込みが無く増資を中止した例、株式を併合後、資本金1HKドルのファンドに大量の新株予約権の割当を行いながら、そのファンドが大量保有報告書を提出していない例なども出てきている。このような既存株主をないがしろにするファイナンスを防止するために、割当先が議決権の一定比率以上を占めることになる第三者割当増資は株主総会の決議を義務付ける、大量保有報告書を提出しないような相手への割当を禁止する、割当先の詳細について発行会社に開示を義務付けるといった対応を考えても良いのではなかろうか。

先月中旬に、英国を訪問し、アクティビストに対する英国企業の対応等を取材した。そこで改めて再認識したのは、英国では「会社は株主のものである」ということがあたりまえになっているということである。アクティビストだからといってうろたえることなく、あくまで株主の中の一人として対応をしている。株主との対話を重視し、株主の支持を得られない取締役は退任するという文化が定着している。皮肉なことに、英国滞在の最終日に、NHKで日本の春闘の報道を見た。そこでは日本企業の代表が、株主への還元重視のため賃上げを抑制せざるを得ない旨の発言をしていた。株主に対しては他のステークホールダー重視を主張し、労働者には株主還元を理由に賃上げを渋る。取引先を軽視した不祥事も続発している。一体、わが国では、企業は何のために存在しているのか?改めて考えさせられた。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

執筆者紹介

最新コラム