税制で温暖化は防げるのか!?

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2008年01月31日

道路特定財源である揮発油税などのいわゆるガソリン税の暫定税率を延長するか否かが今国会の最大の争点となっている。

報道によると(※1)、政府の試算では、暫定税率が廃止され、自動車の利用が増えた場合、CO2排出量が年2400万トン増加するのだという。これは、国内排出量の1.9%に相当するとのことである。CO2など温室効果ガスを削減し、地球温暖化防止しようとする流れに逆行している、というのが暫定税率維持に向けた政府の主張の一つとなっている。

ところで、わが国における現在のCO2の排出状況はどのようになっているのであろうか。環境省の発表(※2)によると、2006年度における管理主体別の二酸化炭素の排出状況では、8割が企業や公共部門関連からの排出であるものの、残りの約2割は自家用車、一般廃棄物を含め、家計からの排出が占めている。2006年度の部門別の内訳をみると、家庭部門からのCO2排出量は1億6600万トンとなっており、わが国全体の排出量の約13%を占めるとされている。また、京都議定書の規定による基準年である1990年と比べると、家庭部門からのCO2排出量は30.4%増加したとされている。

CO2の排出量といえば、発電所などのエネルギー転換部門や工場などの産業部門からの排出が大部分を占めているのであって、家庭部門からの排出は微々たるもの、というのが世間一般の認識ではないのだろうか。家庭部門からのCO2排出量削減は喫緊の課題なのである。

先日、国税関係の平成20年度税制改正案となる、「所得税法等の一部を改正する法律案」が、国会に提出された。この中では、地球温暖化防止をはじめ環境問題に対する税制上の対応として、家庭部門のCO2排出量を削減し、省エネルギー対策等を促進するため、住宅の省エネ改修促進税制などを創設するとしている。これは、一定の省エネ改修を含む増改築工事などを行った場合に、ローンの一部を所得控除するという特例措置である。

このような制度が成立すれば、家庭部門のCO2排出量の削減につながるかもしれないが、どれほどの削減につながるのかは未知数である。

エネルギーに課税することで二酸化炭素の排出量に応じた負担をする環境税については賛否両論となっており、来年度の改正案に盛り込まれることは見送られた経緯がある。今回の改正案が今後の環境税導入の契機となるのか。注目していきたい。

(※1)CO2排出量、年2400万トン増=ガソリン暫定税率廃止で-政府試算 - 2008年1月18日、時事通信社 -

(※2)2006年度(平成18年度)の温室効果ガス排出量速報値について - 2007年11月5日、環境省-

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 鳥毛 拓馬