日本企業は、リスク管理に甘いのか?

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2007年05月23日

  • 大村 岳雄
昨今メディアで報道される相次ぐ企業不祥事を見ると、日本企業はリスク管理が甘いとの印象を持ちかねない。

しかし、大和総研・経営戦略研究所が、2004年8月と2006年3月に実施した上場企業向けのリスクマネジメントアンケート調査(※1)は、リスク管理の体制整備を進める企業が増えてきていることがわかった。リスク管理の専任部署やリスク管理委員会やコンプライアンス委員会などの会議体を設置する企業が増えてきたのである。もちろんこれには、2004年3月期の有価証券報告書で「事業等のリスク」「コーポレートガバナンスの状況」などの項目につき開示が要請されるようになった制度面の影響もあろうが、企業にリスクマネジメントについてインタビューを行うとリスク管理の重要性に対する認識が高まってきていることを感じる。

また、テロ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、北朝鮮からのミサイルなど、日本企業といえども無視できないリスク要因も増えてきた。これらに関しては、海外ビジネスに長けている商社ばかりでなく、海外渡航の多い航運・海運業やメーカーでも顧客の安全確保はもちろんのこと、従業員の安否確認やテロ対策のマニュアル作りなどリスク管理の整備を行っている。

ただ、日本企業のリスク管理において今後の課題は、2点ある。(1)全社レベルで横断的にリスク要因を洗い出して、統合的にリスク管理していく取り組みはまだ一般的でないこと、(2)リスク管理の専任部署の人員拡充が図られていないこと、である。

「リスク洗い出しの重要性」

そしてもう一つ重要なことは、リスクの洗い出しである。昨年7月4日、石川県の上場企業でリスク管理について意見交換をした際、先方の役員から「北朝鮮からミサイルの飛来リスク」や「小松空港の自衛隊機の墜落リスク」を考慮すべきか問われ、その場では「発生確率が低いので検討するに値しないのでは」と回答した。翌5日早朝に、北朝鮮がミサイルを発射したのは、衆目の知るところである。

このときばかりは、猛省するとともに、「発生確率が低くとも、まずは広くリスクの洗い出しを行うことが重要である」とプレゼンでのコメントを修正した。

(※1) http://www.dir.co.jp/release/20060530.html

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