重要提案行為等を巡る問題

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2006年12月27日

TOB制度・大量保有報告制度の見直しについての細目を定める政省令が公布され、いよいよ新しいTOBルールが12月13日にスタートした。大量保有報告制度は、若干遅れて、来年1月1日から新ルールが本格スタートするが、一部に、前倒しで12月13日からスタートしているものもある。それが「重要提案行為等」についての見直しである。

新ルールの下では、株主総会や会社の役員に対して、重要な資産の処分、役員の構成の重大な変更、配当政策に関する重要な変更、発行する有価証券の上場廃止などを提案する行為(重要提案行為等)を目的とする機関投資家等には、特例報告を認めないとしている。つまり、これらの行為を目的とするいわゆるアクティビスト・ファンドなどの場合、基準日ベースで報告すればよいという「特例報告」は認められず、5%を超えるたびに5営業日以内に報告する「一般報告」が義務付けられるのである。これは、最近、「特例報告」を悪用した一部の悪質なファンド等に対する対策として設けられたルールであることは言うまでもない。

ところが、いわゆるアクティビストではない、一般の運用機関の間でもこのルール変更が大きな反響を呼んでいる。「アナリスト・ミーティングでディスカッションすることも許されないのか?」「発行会社に対するインタビューも駄目なのか?」「懇親会で意見交換をしても『重要提案行為等』になるのか?」といった具合である。

こうした疑問に対して金融庁は、「最終的には個別事案ごとに判断される」という限定付きながら、決算報告・IR説明会等での意見陳述、アナリストやファンドマネージャーが取材の一環として純粋に質問をするような場合などは、「重要提案行為等」に該当する「可能性が低くなる」との見解を示した。これは、新ルールの下でも、アナリストやファンドマネージャーがこれまで通りの健全な取材活動等を行うことについてまで特段の制約を課すつもりはないとの方針を、当局として示したものと考えられる。それでも、運用機関サイドは、「これまで通りの取材活動を行っていただけなのに、ある日突然「重要提案行為等」を理由に「特例報告」を認めないとされるのではないか」という不安を完全に払拭できないでいるようだ。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 横山 淳