中国、M&A促進に向けた環境整備が進む

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2006年01月31日

2003年以降、外国企業による中国企業を対象としたM&A投資が急増している。UNCTADによれば、03年、04年の中国におけるクロスボーダーM&Aは、それぞれ前年比で84.4%増、77.2%増を記録。金額では、04年で67.7億米ドルと、直接投資受入額606.3億米ドルに占める比率は11.2%となった。

06年1月1日施行の新会社法と新証券法は、今後のM&Aの活発化や投資回収に関する規制緩和の点から注目される。

まず、新会社法には、株式譲渡に関する規制緩和が盛り込まれている。従来、発起人が保有する株式は、会社設立日(上場会社の場合は上場日)から3年以内の譲渡は禁止されていたが、新会社法では、これが1年に短縮された。さらに、在任中の譲渡が禁止されていた会社の役員、監事、高級管理職の持株については、一定割合での譲渡ができるようになった。

また、新証券法には、買収コスト低減につながる規定が設けられた。上場会社の買収について、従来は、持株比率が発行済株式数の30%に達し、さらに買収を継続する場合、全株主を対象とした公開買付の実施を求めていたのに対して、新証券法では、一定部分を対象に公開買付を行うことができるとした。上場廃止基準に抵触しない一定部分の買収により、上場会社としてのステイタスを維持しつつ、会社の経営権の支配が可能となるのである。

さらに、06年1月末以降は、長期的かつ戦略的な投資を行う海外投資家が、全株流通改革を完了したA株上場会社の株式を直接取得することが認められるようになった。特筆すべきは、海外投資家が株式を取得した上場会社を、外資系企業とみなすことである。これまでも外国企業が上場会社の非流通株である国家株・法人株を買収することは可能であったが、外資の持株比率が何%であろうと、外資系企業とは認定されなかった。上場会社には、(1)外資系企業として、税制面などでの優遇策を享受することができる、(2)海外の先進的な経営手法、技術、資金などを導入し、コーポレートガバナンスを改善することで、企業の活性化や再生が図られる可能性がある、などのメリットがあり、今後、上場会社の外資導入機運は大きく高まるとみられる。

以上のように、中国では、M&Aの活発化や投資回収に関する規制緩和が進められている。外国企業が中国企業を対象にM&Aを行うメリットは、(1)既存の企業・資産の買収や株式取得なので、初期投資を圧縮することができる可能性がある、(2)販売ルートや原材料調達ルート、営業拠点、ブランド力などを引き継ぐことができる、(3)不振企業を再生し、企業価値を高めた上で売却するなど、いわゆる投資銀行業務による利益獲得のチャンスがある、などである。さらに、外国企業による中国企業のM&Aは、外資の力を借りた国有企業改革の推進という、中国側のニーズと合致することもあり、今後の動向が注目されよう。

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齋藤 尚登
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経済調査部

経済調査部長 齋藤 尚登