世界の選挙アレコレ

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2004年10月13日

今年に入り、世界各地で選挙が相次いで実施されている。定期的な任期があるものだから選挙日程が重なっても不思議はないが、総じて政権与党に厳しい結果になってきた。時系列にみると、ギリシャやスペインの総選挙、仏英の地方選挙、独の各州議会選、印の下院選挙、6月半ばの欧州議会選挙といずれも与党が敗北し、政権交代につながった国もある。続いて、加の総選挙、日本の参議院選と与党は苦戦を強いられた。しかも、米国と対立した仏独も振るわなかったように、選挙結果はイラク戦争への対応とは無差別であった。しかし、先週末に実施された豪の総選挙では、イラクへの部隊派遣継続を主張する与党保守連合が大勝し、この流れを止めた格好である。

豪の選挙制度にはユニークな点がある。まず、選挙権を持つ満18歳以上の豪国民は、有権者の登録と投票が義務付けられている。正当な理由がなく投票しなかった者は罰金を課せられることもあり、投票率は約95%と非常に高い。また、小選挙区制の場合、相対的に一番票を取った人が当選するために死票が増えるという問題点がある(仮に30%の得票率で当選した場合、残りの70%が死票になる)。小選挙区制である豪の下院では、投票者は立候補者全員に優先順位をつけなければならない。過半数を獲得する候補者がいなかった場合は、最下位の候補者の票が投票者の第2希望に応じて再配分される。過半数の得票者が出てくるまでこの過程が繰り返される。従って、当選者は、セカンドベストとはいえ、有権者の多数派の支持を得たことになる。

そして、選挙イヤー最後にして最大のイベントが米国の選挙であろう。予備選を皮切りに約一年にわたる長い選挙期間も、残すところ後3週間で投票日を迎える。現職のブッシュ大統領にすれば、この4年間は再選という目標を達成するためにあったと言っても過言ではないだろう。日本のメディアでも討論会のやり取りやブッシュ大統領の顰めっ面が紙面を飾り、ブッシュ、ケリー両候補者の支持率が連日報道されている。それだけ次期大統領の4年間の行動が世界各国に影響を及ぼすと考えられており、政治・経済面における米国の存在感の大きさを表している。以下、大統領選に絡むアレコレである。

大統領選挙先物市場がアイオワ大学によって運営されている。監督官庁の認可のもとで実際にお金が動いており、一般の人も参加することができる。なかでも、勝利した政党の先物銘柄だけが一口当り1ドルで償還され、それ以外は価値ゼロになるという、大統領選さながらの取引が人気を集めている。9月に入って暴落していたケリー銘柄が月末の討論会をきっかけに巻き返しているが、接戦を演じている各種世論調査に比べるとブッシュ大統領がリードしており、依然として参加者から“勝つ=儲かる”候補とみなされているようだ。

また、米大統領選挙は豪に比べると投票率が低い。前回2000年選挙の投票率は59.5%であり、今年夏の参議院選挙の約57%とあまり差がない。しかも、人種や所得、年齢の階層ごとに投票率の乖離がみられる。黒人やヒスパニックよりも白人(非ヒスパニック)、若年層よりも中高齢者、低所得者よりも高所得者の方が投票率は高い。今回は従来よりも少ないとされる無党派層への働きを強めると同時に、組織の取りこぼしを少なくしなければ当選は難しい。共和・民主両党は、潜在的な自分達の支持者をいかに有権者登録させて投票所に足を運んでもらうかに、力を注ぐことになる。

大統領選ばかりに焦点が集まるが、同時に実施される議会選挙の結果にも注目しなければならない。日英独加などのように、議会の過半数を占めたあるいは第一党のトップがその国のリーダーになるケースと異なり、米国の場合、大統領の出身政党が議会では少数派というねじれ現象の可能性がある。従って、ブッシュ、ケリーいずれが大統領になっても、敵対政党に議会を握られていては、公約に掲げた施策の実現の道のりは遠く、妥協する必要性が出てこよう。

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近藤 智也
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政策調査部

政策調査部長 近藤 智也