減資、法定準備金減少の個別催告の省略

RSS

2004年02月27日

2月13日、電子公告制度を導入する商法改正法案が国会に提出された。実現すれば、従来の新聞を通じた公告の他に、インターネットを使った電子公告が可能となる。公告に伴う企業の負担は大幅に軽減されることが期待される。

同法案では、電子公告制度の導入の他にも、重要な内容の改正が盛り込まれている。それが、減資や法定準備金減少手続での債権者への個別催告の省略である。

現行商法では、合併、減資、法定準備金減少、会社分割を行う場合には、債権者保護手続として、異議があれば申し出るように求める内容を官報に公告し、更に「知れたる債権者」に対しては個別に催告を行わなければならないとされている。合併と会社分割(吸収分割)の承継会社については、官報に加えて、日刊新聞紙による公告も行った場合は、債権者に対する個別催告を省略することが認められている。しかし、減資や法定準備金の減少については、こうした特例は認められていない。つまり、払戻しなどによって社外に資産を流出させることなく、単に計算上の数字を変更するだけの場合であっても、個々の債権者に対して異議があれば申し出るように、という個別催告を行わなければならないのである。

改正法案では、官報公告に加えて、日刊新聞紙による公告か、新たに導入が予定されている電子公告を行えば、減資・法定準備金減少についても個別催告を省略できることとしている。実現すれば、減資・法定準備金減少に伴う企業の負担は軽減されることが期待される。それでは債権者の立場からはどうか?確かに、一見、個別催告がなくなるため債権者には不利になるようにも見える。しかし、現在も、コストを嫌って、法に違反するものの、あえて個別催告を行わないケースも少なくない、との指摘もある。こうした状態が放置されることは、債権者にとっても決して好ましいことではない。加えて、新たに導入される電子公告が活用されれば、減資・法定準備金減少であれば1ヶ月間、公告内容がホームページに掲載されることとなる。つまり、インターネットへの接続環境があれば、いつでも必要な情報を確認できるようになる。これは債権者にとって、むしろ好ましいことと言えるだろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 横山 淳