株券ペーパーレス化に向けて

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2003年11月25日

CP、債券などに続き、株券もペーパーレス化に向けて動き始めた。解散・総選挙の関係で、当初の予定よりは遅れてはいるが、来年の通常国会には関連法案が提出される予定である。法律が可決・成立すれば、上場会社等の株式は「法律の施行後5年以内の政令で定める日」(一斉移行日、平成16年通常国会で成立するとすれば、平成21年4月1日が予想される)に、一斉に全てペーパーレス化される見通しである。つまり、一斉移行日に「株券」は無効となり、代わって証券会社等に開設された口座に何という銘柄の株式を何株保有しているという記録が、株主であることの証明となるのである。

株券ペーパーレス化が実現すれば、投資家にとっては株券を紛失したり、盗難されたりするリスクが小さくなる。また、発行会社にとっては、一々株券を印刷する必要がなくなるので、株式分割や単元のくくり直しを容易に実施できるようになる。更に、市場全体にとっても、決済の安全性・効率性・迅速性が向上することが期待される。

それでは株券ペーパーレス化にデメリットはないのだろうか?確かに、証券会社等はシステム対応のための負担が必要になるだろう。しかし、株券ペーパーレス化に伴うメリットと比べれば、それほど大きなデメリットとは言えないだろう。ただ、懸念されるのは、一斉移行時に様々な事務手続が集中して混乱が生じないだろうか、ということである。

一斉移行に伴う混乱を最小限にとどめるには、予め保管振替機構への預託を進めることが効果的であろう。保管振替機構に預託されている株券については、一足先に、流通面でのペーパーレス化が実現し、新制度にもスムーズに移行できるからである。

ただ、保管振替機構への預託率は、2002年度末時点で未だ約60%である。今後、一斉移行日までにどれだけ預託率を上げることができるかがカギとなるだろう。

更に、税制への対応も併せて考えた場合、スケジュールはもっとタイトになる。様々な税制上の特典を受けることができる特定口座へのタンス株の預入は来年末までとされているのである。より一層、周知、徹底を図る必要があるだろう。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 横山 淳