地域・パブリック
バイオマス発電にかかる3つの期待

地域活性化と森林機能の維持に向けて

2015年7月1日

  • コンサルティング・ソリューション第三部 コンサルタント 平田 裕子

2012年7月にスタートした再生可能エネルギーの固定価格買取制度(※1)により、メガソーラーなど太陽光発電設備の導入が急速に進んだ(※2)。他方で、太陽光発電の買取価格を好条件に設定したことなどから、買取価格の権利確保を目的とした不確実案件の増加や、電力会社による系統への接続保留など様々な課題を生み、政府は運用見直しなどの対応を迫られることになった。

こうしたなか、2015年度の買取価格は、太陽光発電が3年間の利潤配慮期間を終えて27円/kWhまで下がる一方で(※3)、バイオマス発電は32円/kWhに据え置かれ、新たに小規模枠が設けられるなど、バイオマス発電への期待が見てとれる内容となった。

バイオマス発電に期待がかかる背景として、ここで3点あげたい。一点目は、バイオマス発電の持つ電源特性に対する期待である。太陽光・風力発電など気候条件により出力が大きく変動する電源と異なり、バイオマス・地熱・水力発電などは、安定的な電力供給を行うことができる。原子力発電と同様に「ベースロード電源」の役割を担うことが可能であり、今後、原発依存度低減をはかる上で最大限の導入が期待される電源となっている。

二点目は、バイオマス発電事業が、周辺地域と深くかかわりを持ち、地域活性化を促す事業であり、「地方創生」の流れと合致する点である。例えば、太陽光発電事業の場合、発電にかかるコストの約75%を初期投資である設備費が占めており、継続的な地域経済への貢献が限定されるが、バイオマス発電にかかるコストを見ると、設備費は約10%と低く、周辺地域からの燃料調達費(搬出、運搬、加工等)や、地域雇用に繋がる労務費などランニング費用が大部分を占める。売電による売り上げの多くが、継続的に地域経済に還元される構造となっている。

三点目は、バイオマス発電による木材利用が、国民生活を支える「森林の多面的機能」の保持に貢献する点である。日本は国土面積の約3分の2を森林でおおわれた世界有数の森林国である。49億m3にのぼる森林資源量は、毎年約1億m3のペースで増加しており、その多くが今後高樹齢による収穫期を迎えようとしている。森林は、木材等の物質生産機能だけでなく、土砂災害防止、水源涵養、生物多様性維持、地球温暖化防止、景観や癒しといった公益的機能を含めた多面的機能を有している(図表1)。しかし、植栽、保育、間伐といった森林整備が継続的に行われなければ、こうした機能を維持することができなくなる。したがって、公共事業として支援されるべき側面を持つものの、国産木材の利用が広がり、林業が活性化されれば、林業の生産活動サイクルのなかで自立的で持続的な森林整備が可能となる。「森林・林業基本計画」(平成23年7月)では、国産木材需要を2020年に39百万m3(2009年実績では18百万 m3)にする目標が掲げられており、バイオマス燃料による利用目標(※4)は6百万 m3とされている。

現在、「地方創生」の掛け声のもと、全国の地方自治体では「地域人口ビジョン」と「地方版総合戦略」の策定が進められている。全国に先駆けて総合戦略を発表した塩尻市では、「確かな暮らしを営む地域創造戦略」の1つとして、バイオマス発電を軸にした林業再生を目指す「信州F・POWERプロジェクト」を掲げている。同事業は、長野県、征矢野建材(株)などとの産学官連携により推進されており、これまで積極的に利用されてこなかった広葉樹などによる床材の製造と、そこで発生する端材や間伐材等によるバイオマス発電が計画されている(図表2)。同事業は、「豊富な森林資源を無駄なく活用し、その利益を山側に還元することで、林業を産業として復活するための新たなシステムを構築し、森林の再生や林業・木材産業の振興を図るための取り組み」として位置付けられている。また、素材生産で約250人、運搬で約100人、製材工場で約40人、発電施設で約25人、合計約400人の新たな雇用創出を見込んでいる(※5)。一般的にバイオマス関連事業では、燃料チップの安定供給や安定的な木材需要の確保が課題となるが、同事業では、長野県がサプライチェーンセンターを構築して燃料チップの需給調整を行うことや、建材メーカーなどが床材などの木材販路拡大の一端を担うことで対応を図る。

地方の多くが森林資源を保有している。地域によるバイオマス発電事業への試みが、再生可能エネルギーの推進だけでなく、電力の安定供給や地域活性化、森林の多面的機能の維持による安心・安全で豊かな国民生活の実現に繋がるよう、今後の動向に期待したい。

信州F・POWERプロジェクトの概要

(※1)「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(平成23年8月)。再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)で発電された電力を、一定期間、固定価格で買い取ることを電力会社に義務付ける制度。買取に要した費用は、電気料金の賦課金として回収される。
(※2)560万kW(制度施行前)→1,626万kW(2015年1月末時点)
(※3)2012年度は40円、2013年度は36円、2014年度は32円、2015年4~6月までは29円。
(※4)パーティクルボード等木材系材料としての利用目標も含まれる
(※5)長野県・塩尻市・征矢野建材(株)「信州F・POWERプロジェクト事業計画」(平成25年6月18日)

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

執筆者紹介

関連サービス

お問い合わせ

PDFファイルの閲覧にはAdobe® Reader®新しいウィンドウで開きますが必要となります。お持ちでない方は、アドビ システムズのウェブサイトから無償ダウンロードができます。
なお、Adobe® Reader®のインストール方法は、アドビ システムズ ウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧ください。

Get Adobe® Reader®

コンサルティング

コンサルタント

セミナー