人事・健保・退職給付
退職給付債務計算業務にITILのノウハウを活用する

2014年3月6日

  • コンサルティング・ソリューション第三部 コンサルタント 原田 裕太

1.はじめに

退職給付債務とは、企業の事業主が、従業員や制度加入者などに対して支払うべき退職金や年金などの見込み額のうち、認識時点までに発生していると認められる額を一定の割引計算により算定したものである。従業員がいつ辞めるか、退職時の退職金はいくらか等、将来の不確定要素も織り込んで計算するのだが、その計算は、大変複雑である。

現在、筆者は、退職給付債務計算の受託チームに所属し、企業の退職給付債務計算を行っているが、以前は、システムエンジニアをしており、主にクラウド環境の設計・構築を行っていた。クラウド環境の設計においては、ITガバナンスのフレームワークである「ITIL」を導入し、「ITサービスの品質向上」と「ビジネスおよびその顧客のニーズに適したITサービスの提供」に尽力してきた。

ITILには、「インシデント管理」「問題管理」「変更管理」「リリース管理」「構成管理」などのフレームワークがあり、そのノウハウは、ITのみならず、退職給付債務計算業務でも共通に生かされるものである。例えば、数百社におよぶ膨大な数の退職給付債務計算をチームで行っている中では、サービスレベルを合わせるために作業マニュアルを整備することや、イレギュラーな事象や作業方法に変更が発生した際にチームで情報共有ために会議を開催し、資料を整備することが重要である。これらは、ITILで言うところの「サービスレベル管理」、「問題管理」「リリース管理」といったものになる。

本稿では、退職給付債務計算業務において、ITILのノウハウが活用されている作業を2点紹介したい。


2.規定やデータ確認作業におけるITILプロセスの活用例

一つ目は、ITILプロセスの「変更管理」「構成管理」が活用されている『制度の確認』作業について紹介する。退職給付に関する制度は、企業ごとに様々であり、退職一時金制度のみの企業、確定給付企業年金制度がある企業のほか、適格退職年金制度・厚生年金基金制度などの受給権者が存在する企業もある。筆者が対応した企業では、退職給付に関する制度数が1つといった企業から、中には制度数が6つ以上ある企業まで存在した。制度ごとに給付方法が異なるため、規定を入念に読み込み、規定から制度内容について判断できないケースでは、企業担当者への問い合わせを行うなどして、制度の構成をデータベースに登録して計算作業を進めている。

本作業では、制度内容の変更に対して、新しい制度情報とともに過去の制度情報も共有フォルダで管理し、「いつ、どのような」変更があったかを過去を遡って確認できるようにし、また、登録された制度の構成情報は、共有フォルダで一元管理しており、他のメンバーがいつでも確認できる環境を整備している。

二つ目は、ITILプロセスの「問題管理」「変更管理」が活用されている『従業員、退職者、受給権者データといった計算データの確認』作業について紹介する。大企業になると、従業員数だけで数万人といった企業も少なくない。膨大な量のデータから、上記のような事象を見落さないために、必ずダブルチェック、トリプルチェックを行っている。実際に、受領した計算データの確認作業中に、次のような事象がみられた。

  • 同一人物が従業員データと退職者データに重複して存在している。
  • 60歳で退職している方が、定年退職ではなく自己都合退職となっている。
  • 退職者データが過去3年分揃っていない。
  • 指定した期間までの従業員の累計金額や累計ポイントが反映されていない。
  • 年間付与される金額、ポイントが、規定に記載されている最低付与数値よりも少ない。
  • 従業員の入社年月日や生年月日が正しく反映されていない。

作業において他の企業でも共通して起こりそうな事象については、適宜、事象についての資料を作成し、会議を開催して情報共有を行っている。また、データの修正を行う場合には、その変更内容について、すべて履歴を管理しており、どのような変更があったかを遡って確認できるようにしている。

最後に、システムにおいては、「インシデント管理」から「構成管理」までの運用管理において、ITILプロセスを活用することで、品質が向上し、企業のプレゼンスが高まった事例が多数存在する。退職給付債務計算業務においても、筆者が経験してきたITILのノウハウを活用しながら、「サービスの品質向上」、「顧客ニーズに適したサービスの提供」に努めていきたいと考えている。

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