人事・健保・退職給付
上場企業に広がる1円ストック・オプションと導入時のポイント

2014年1月22日

  • コンサルティング・ソリューション第三部 コンサルタント 小林 一樹

最近、新聞や雑誌等で株式報酬型ストック・オプションを導入する企業が増えているというニュースをよく目にするようになった。株式報酬型ストック・オプションとは、株式を報酬として付与することを目的とし、オプションの権利行使価額を低く設定して(通常は1円)、実質的に株式と同等の価値を付与対象者に与えるものである。一般的に1円ストック・オプション(以下、1円SO)と呼ばれており、主に役員退職慰労金を廃止する際の代替策として用いられることが多い(2013年11月13日掲載「役員の退職給付の新潮流」参照)。大和総研の調べによると、1円SOの導入件数は直近5年間で平均20%を超える割合で増加している。本稿では、今後更なる増加が想定される1円SOについて、導入までにどのような準備をすべきか、そのポイントを整理する。

  • 1円SO導入までのスケジュール

1円SOを導入する際は、株主総会にて発行枠(金額、個数)の承認を得る必要があるため、株主総会をターゲットとして準備を進める必要がある。6月に株主総会を開き、7月に割当を行う会社を例とすると次のようなスケジュールとなる。大きく、制度設計、発行決議準備、割当の3段階に分けるとイメージしやすい。

まずは制度設計から着手する必要がある。具体的には、1円SOへの移行割合や付与対象者の決定といった制度の中身を固める作業となる。この段階でのポイントは、関係者間の合意形成をきっちり行い、足場を固めておくことである。1円SOにより役員が受け取る実質的な報酬は権利行使時の株価に連動することから、場合によっては報酬額が目減りすることがある。1円SOを他の報酬制度と組み合わせるなど、報酬制度全体のバランスを考慮したうえで、関係者間の合意形成ができ、かつ役員のインセンティブとして最大限の効果を得られるような設計にしておくことが重要である。また、この時点で役員報酬体系を見直すことによる税務上の取り扱いを所管の税務署(※1)へ照会しておくことも必要であろう。

次の段階として、発行決議に向けた準備を進めていくことになる。ここでのポイントは、規程や募集要項など所定の資料を効率良く作成することである。株主総会付議の準備等も含め作業ボリュームが増えるため、各資料の雛形やノウハウを提供している専門機関の活用も選択肢の一つである。

株主総会にて発行枠の承認を得ると、いよいよ割当を行うことになる。割当においてはSOの公正価値をどのように計算するかがポイントとなる。1円SOは一般的に役務提供の対価として付与されることから、役務提供の期間において費用計上することが求められる(詳細は2014年1月8日掲載「ストック・オプションに関する会計処理の概要」参照)。この費用計上額は、会計基準に従って合理的な方法で見積計算することが必要となる。見積計算にはブラック・ショールズモデルや二項モデルといったオプション価格の計算モデルを使用することとなるが、オプションの満期までの期間やボラティリティ、配当率など、算定基礎条件の設定が評価額に影響するため、モデルの意味を十分に理解して使用することが求められる。自社にブラック・ショールズモデル等を用いた公正価値計算のノウハウが無い場合は、計算に苦慮することが想定される。

上述の通り、1円SOは役員退職慰労金の代替策として需要の多い施策であるが、導入までにやるべき準備は意外と多い。また公正価値計算等、専門的な知識も必要となることから、1円SOを導入する際には、信頼できる専門機関のサポートを受けることも有効である。なお、大和総研では1円SO導入の豊富なサポート実績があり、導入から計算業務まで一貫したサポートサービスを提供している。また、複雑な公正価値計算に対しても、確率、統計計算といった数理業務のプロフェッショナルであるアクチュアリーを擁し、本分野での先進的な研究を行っている大学教授による検証を実施するなど、信頼性の高いサービスを提供する体制を整えている。

今後も役員退職慰労金から1円SOに移行する企業数は増えていくことが想定される。大和総研では、1円SOの導入や公正価値算定に関するノウハウについて今後も情報発信していく予定である。

(※1)事業主が所得税を納めている税務署。

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