企業経営
2015年度上期・持株会社導入レビュー

2015年10月14日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 主任コンサルタント 真木 和久

2015年度上期(2015年4月~2015年9月)において、「持株会社化」を決定した会社・「持株会社化の解消」を決定した会社がいくつかある。本稿では、それらの背景について考えてみたい(以下の日付において、2015年中は、年を省略している)。

① 5月8日に、福島を本拠にラーメンチェーン「幸楽苑」を展開する、幸楽苑が持株会社体制に移行すると発表した。会社分割により、7月1日に、幸楽苑は「幸楽苑ホールディングス」に商号変更し、傘下に飲食事業(国内直営事業)等の会社を置く。

プレスリリースには、「当社グループは、安全・安心でかつ価値のある商品を、客層を広げたより多くのお客様に提供し、当社グループの持続的な成長と企業価値の最大化を実現するためには、権限委譲とともに責任を明確にし、より一層の経営の効率化を図り、市場環境の変化に即応できる機動的かつ柔軟な意思決定と業務執行を可能とするグループ体制への移行が必要と考え、持株会社体制への移行を決定いたしました。」とある。

幸楽苑のケースで特徴的なのは、事業会社には、国内直営事業のみ移管し、持株会社にフランチャイズ事業を残すことである。また、参考資料として、「持株会社体制移行後の組織図イメージ」がプレスリリースに添付されている。現状の本社が部署単位で記載され、どの部署が持株会社に残り、どの部署が事業会社に移行するかが掲載されている。持株会社体制移行において、部署単位レベルで公表しているのは、あまり見たことがなく、珍しい例といえる。

幸楽苑以外に、外食業界で持株会社化を決定した会社としては、グルメ杵屋(3月13日公表)・すかいらーく(9月17日公表)が挙げられる。

② 8月27日に、海洋性コラーゲン主成分の化粧品の製造・販売を行う、ドクターシーラボは、会社分割により、持株会社体制に移行すると発表した。9月10日及び9月17日に発表されたプレスリリースによると、12月1日に、ドクターシーラボは「シーズ・ホールディングス」に商号変更し、傘下に化粧品事業・健康食品事業等の会社を置く。プレスリリースには、「…当社は、新規事業やM&Aを含むグループ経営の戦略立案機能を強化すること、グループ各社の権限・責任の明確化とともに経営の自主性を推進してグループとして企業競争力の強化を図ること、グループ経営管理及び業務執行の分離によるコーポレートガバナンスの向上を図ることが必要であると判断し、これらを実現する上で最適な手法として、今般、本吸収分割の方法による持株会社体制への移行を決定した…」と記載されている。2015年7月期・決算説明会資料を見ると、持株会社化直後のドクターシーラボ事業に加え、「M&A、資本提携、合弁事業等によって傘下企業を加える」とある。

上記で見た事例①②は、グループ内の持株会社化である。つまり、現状のグループ内の会社形態を変えることにより、グループが求める持株会社化の目的を達成しようとするものである。

持株会社化には、グループ内の持株会社化以外に、経営統合としての持株会社化もある。以下では、その事例を見てみよう。

③ 9月15日に、ハム・ソーセージ業界大手の伊藤ハムと、業務用食肉加工大手の米久が、株式移転による経営統合を公表した。株式移転により、2016年4月1日付けで持株会社がスタートし、傘下に伊藤ハム、米久を抱える。新体制では、持株会社が上場会社となり、伊藤ハム・米久は上場廃止となる見込みである。伊藤ハムと米久は、次の3つのシナジー効果の創出を想定しているとのことである。

  1. 「…伊藤ハムと…米久が、互いの特色を強化・補完し合うことで生産・販売数量を増加させるとともに、両社が有する生産から販売に至るサプライチェーン全体の稼働率を高め、競争優位性を確保することで、更に積極的な事業展開が可能になる…」
  2. 「…本経営統合に伴う企業規模拡大のメリットを活かし、加工用原材料を含むすべての外部調達品を効率的かつ低コストで調達して、原価低減と収益性の向上を実現したい…」
  3. 「…両社で共通する物流・間接機能等を有機的に再編成し効率性を徹底的に追求すること、新たな価値観を創出し新商品の開発領域を拡大することなど、従来一社単独では成し得なかったコスト削減や商品開発力の向上等を実現し、得意先への提案力の強化に繋げたい…」

(以上1~3は、プレスリリースによる)

伊藤ハムと米久が属する食肉加工業界においては、少子高齢化等により消費マーケットが縮小し、企業間競争が激化する可能性が高い。伊藤ハムと米久は、この中で、生き残りをかけて、経営統合を決断したものと思われる。国内マクロ環境の大幅な改善は見通しにくいため、このような食品業界の再編は、今後も増えていくのではないかと考えられる。

持株会社化を決断する会社がある一方、持株会社体制を解消した会社もある。

④ 4月27日に、回転寿司大手のカッパ・クリエイトホールディングス(以下、「カッパ・クリエイトHD」)は、100%子会社かつ事業会社であるカッパ・クリエイトと合併すると発表した(10月1日に合併。新商号は「カッパ・クリエイト」)。以下、プレスリリースを一部引用する。「…平成26年12月4日をもって株式会社コロワイドの連結子会社となったことを契機として、当社グループは、これまでの組織体制を見直し、事業部門とコーポレート部門を統合することにより経営資源を再結集し、全体最適化、高効率化への意識改革を図ると共に、経営モデルを革新することによって収益力を高め、経営基盤の更なる強化を目指しております。本合併は、かかる目標に向けたプロセスの一環として実施されるものであります。」

カッパ・クリエイトHDのケースでは、同社がコロワイドの子会社となったことが、持株会社解消の契機になったと考えられる。

持株会社体制を解消する会社もあるが例外的な場合が多く、現在、幅広い業界で持株会社体制が導入されている。

4月1日に持株会社体制を発足させた近鉄グループホールディングスに続き、関西の大手私鉄会社である京阪電気鉄道が持株会社化を公表した。

⑤ 1月29日に、京阪電気鉄道は、持株会社体制への移行を公表した(移行日は2016年4月1日)。同社は、京阪間と滋賀が地盤の私鉄であり、鉄道が主力ではあるものの、流通事業や不動産事業を拡充している。

プレスリリースより、持株会社体制への移行の目的を引用する。

「(1)グループ事業が自立し成長していくための意識改革と各業種に見合った経営スタイルの確立

(2)グループ横断的な戦略実行と新たな事業モデルの創出に向けた持株会社によるリーダーシップの発揮

(3)持株会社によるグループCRE(グループ保有不動産の最有効活用)をはじめとしたグループ経営資源の戦略的有効活用の促進」

同じ日に、同社は、京阪グループ次期中期経営計画「創生果敢」(2015~2017年度)の骨子を公表している。その後、3月31日及び4月30日に、次期中期経営計画(2015~2017年度)・分割契約締結のプレスリリースが公表されている。

4月30日プレスリリースを一部引用する。

「…人口減少、消費者の価値観の変化、訪日外国人旅行者の急増など、当社グループを取り巻く社会・経済環境は歴史的転換期にあります。こうした状況のもと、創業100年を経た当社グループが次の100年に向けた「第2の創業ステージ」に立ち、次世代に必要とされる新しい価値を創造していくためには、各事業の自立化により、一層の体質強化と意識改革を図りグループ各事業に適合した経営スタイルを確立するとともに、持株会社がリーダーシップを発揮することで、グループCRE(グループ保有不動産の最有効活用)をはじめとしたグループ経営資源の戦略的有効活用を推進し、グループ横断的な戦略を積極的に講じていく必要があります。…」

同社は、2010年を目途に持株会社体制への移行する方針を定めていたが、2008年のリーマン・ショックを契機とする世界規模の景気悪化の影響等により、2010年4月に、持株会社体制への移行を一旦見送った。しかし、その後、経営改革等により、各事業の収支は改善し、自律的な成長戦略を描く基盤が整ったこと等を踏まえ、持株会社への移行を決定したとのことである(同プレスによる)。

持株会社体制は、通常、経営の変革をもたらすものではあるが、同社のように、企業グループの100年の計として、持株会社体制を選択する会社が現れたということは、注目に値する。

コーポレートガバナンス・コードの適用等、企業を取り巻く環境は、より厳しさを増している。今後、「攻め」の経営戦略に基づいて、持株会社体制を選択する会社も増えてくるのではないだろうか。

10年以上に亘り、大和総研は数多くの持株会社体制移行の支援を行ってきた。最近の傾向として、「事業の自立」や「グループ経営効率の追求」を加速させる経営インフラとして、持株会社体制を導入する会社が増えているのも、実感としてある。

こういったことを考える際、大和総研も相談先の一つとしてご検討頂ければ、幸いである。

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