企業経営
バリュエーションを第三者機関が実施する意味

2015年8月19日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 主任コンサルタント 小杉 真

M&Aにおける価格交渉等のための株式価値、事業価値等の算出は、企業の経営企画部門や財務部門などで日常的に行われている。そこで用いられる純資産方式、類似会社比較方式、DCF方式といった計算手法は、書籍、インターネット上など様々なところで見つけることができ、一部の専門家による技術から、すでに一般的な経営知識になってきている。

しかしながら、バリュエーションは計算結果を算出することだけが目的ではない。

そもそも算定対象とした株式や事業の評価について、どういう計算手法を使うのが最善なのか(なぜその手法が適切なのか)、計算手法の中で用いるパラメータをどのような考え方で設定するのか、という点の検討が必要である。実際に採用する計算手法や設定するパラメータは、算定する立場(売り手か買い手か)、算定対象となるものに対して取引する際の持分(比率)、入手可能なデータの制約などによって異なる。たとえば、書籍等では計算上所与とされている倍率(PER倍率やEV/EBITDA倍率など)やベータ値などの市場データは、何らかの方法で合理的に設定しなければならない。評価対象の財務情報等の各種情報についても、経営権を有する売り手であれば大部分を入手可能であるが、買い手であったり、売り手であっても少数持分しか有しておらず経営に携わっていない場合には十分に入手できないことも多い。

このため、数学の公式のように誰が計算しても計算結果が必ずしも一つになるというものではなく、いかに説明力のあるやり方で評価したのか、という点が大きな要素を占めるともいえる。

そこで、専門家たる第三者機関が算定者として存在する意義が見いだされる。社内での価値算出だけだと、一部の条件だけを利用した単なる計算作業の結果になってしまったり、算定対象に思い入れのある場合には恣意的になっている可能性があったり、あるいは当然に検討すべき事項が抜けてしまっているなど客観性が十分でない可能性などもありえよう。

しかも、譲渡価格等についての稟議決裁や取締役会等での検討に際しては、必ずしもバリュエーションに十分詳しくない人も含まれるため、その評価過程が結果を検討するのに十分なものであるか否か判断がつかないこともありえる。しかしながら、専門家によるバリュエーションレポート(評価報告書)を参考とすることで、こうした評価過程に対する検討に必要以上に時間を割くことなく、客観性を確保できることとなる。

今春、大和総研で3度実施した「バリュエーションセミナー」において、株式や事業の買収、少額出資、売却等を実施する際、社内ルールとしてバリュエーショレポートの取得の要否をアンケート調査(回答数62社)したところ、「必要としていない」との回答は15%弱にとどまった。「案件による」、「規模による」という回答も見られたが、現実として決裁の場において、多くの企業では第三者機関によるバリュエーションを必要としているようである。

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