企業経営
2015年2・3月株主総会の概要と示唆(概要編)

キーワードは「ROE(株主還元)」、「社外取締役」そして「CGコード」

2015年5月13日

  • コンサルティング・ソリューション第一部 コンサルタント 吉川 英徳

ゴールデンウィークが終わり、多くの企業で2015年6月の株主総会に向けた準備活動が本格化しつつある。本年の株主総会では、議決権行使助言大手のISS(Institutional Shareholder Services Inc.)が本年2月の株主総会より経営トップの取締役選任議案において資本生産性基準(ROE5%基準)(※1)を適用している事に加え、コーポレートガバナンス・コード(以下CGコード)の適用開始が本年6月1日に予定されている等、昨年以上に「ROE」や「コーポレートガバナンス」に対して株主全体の関心が高まっている。加えて、生保や信託銀行といった国内の伝統的な機関投資家もスチュワードシップ・コード導入を契機に「もの言う株主」に姿勢を変えてきている。

主要企業(TOPIX500採用企業)のうち2・3月に株主総会を開催した49社の議決権行使結果(図表1)を見てみると、上程された議案総数は590議案(前期比+36議案)で、平均賛成率(※2)は94.9%(同+0.6p)と上昇している。賛成率が改善した背景としては、(1)集計対象企業の平均ROE(※3)は9.4%と前期比0.3p上昇し、全体として業績が堅調だったこと、(2)議決権行使の目線が厳しい外国人株主比率は31.7%と前期比0.6p低下したこと、(3)社外取締役の新規選任・増員等のコーポレートガバナンス体制の強化が進んだこと、等が挙げられよう。また、賛成率が大幅に改善した社外監査役の選任議案については、独立性に疑義があり賛成率が6割以下の候補者が今株主総会においてはいなかった点(前期は4名)が寄与したと考えられる。

主要企業(TOPIX500)のうち2・3月株主総会開催の議決権行使結果状況

そうした中で、6月株主総会を見通すうえで象徴的な動きであったのが、経営トップに対する取締役選任議案である。経営トップの賛成率(上位5社・下位5社)の変化について対前期比較で整理すると(図表2)、最も賛成率が上昇した事例としては、抜本的な資本政策の変更を伴うROE向上策を公表したA社(+26.9p)がある。それ以外の上位企業には、社外取締役の新規選任もしくは増員によるコーポレートガバナンス体制の強化を実施した企業がランクインしている。

一方で、賛成率が低下した企業は前述したISSのROE基準に抵触した企業が目立つ。経営トップ賛成率とROEの相関性(図表3)を見ると、5%未満の企業に対しては明らかに賛成率が低くなっている。なお、昨年まで経営トップの低賛成率の主な要因であった社外取締役未選任の企業は49社中1社(前期5社)に減少しており、当該企業の経営トップに対する賛成率は84.1%と、前期比2.2p低下している。

このように、社外取締役の新規選任・増員等によるコーポレートガバナンス強化を背景に、経営トップに対する賛成率が改善する一方で、低ROEの企業の経営トップに対しては反対票が増加している動きは、機関投資家がガバナンスの「外形」だけでなく「中身(ROE)」に評価の焦点を当て始めている証左と言えよう。

経営トップへの賛成率の主な上昇・低下事例
経営トップへの賛成率とROEの相関性

2015年6月株主総会に対する示唆としては、キーワードは「ROE(株主還元)」、「社外取締役」、「CGコード」となろう。前述したように、外国人株主の増加は一服していると見られるが、一方で、国内機関投資家の「もの言う株主」化が進んでおり、スチュワードシップ・コード導入初年度であった昨年以上に本年は上記キーワードに対する関心が高まっていると考えられる。

ROEについては、前述したようにISSが取締役選任議案にROE基準を導入したのに加えて、資産運用会社のみならず、生命保険会社や信託銀行等もROEを重視した対話や議決権行使を行う旨が明らかになっている。同時に、個人株主の関心も高まっており、株主総会にて「ROEに対する考え方」や「目標とするROE水準」、「ROE向上に向けた取り組み」等の質問が出てくると考えられる。加えて、ROEに関連する形で、分子(利益)だけでなく分母(資本)の在り方についても注目が集まっていることを踏まえると、自己資本が過大でかつ現預金等が豊富な企業については株主等から自己株買いや増配等の株主還元が求められる可能性がある。

次に、社外取締役については、今回集計対象企業において、未選任は前述したように1社(前期は5社)であったが、1名選任は11社(同14社)、2名以上選任は37社(同30社)となっている。改正会社法(本年5月施行)による社外取締役の実質義務化に加えて、6月適用開始予定のCGコードや2016年2月以降のISSの議決権行使基準等において、社外取締役の複数名選任を求めていることもあり、1名選任の企業は減少する一方で、2名以上を選任する企業が増加している。このように社外取締役の選任がほぼ一般化した事で、今後は「社外取締役の選任の有無」から「複数名選任」、「社外取締役が企業価値向上に向けてどのような役割を果たしているか」に焦点が変わっていくと考えられ、株主総会においても社外取締役の「実効性」を問う質問が増加していくことが考えられる。

最後のCGコードへの対応については、足元、多くの企業で対応準備が進められていると思われるが、各種報道等を通じて個人株主等の関心も高まっており、株主総会等おいてCGコードへの対応に関する質問等が想定される。特に「政策保有株式(原則4-1)」、「資本政策の基本方針(原則1-3)」、「女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保(原則2-4)」、「経営戦略や経営計画の策定・公表(原則5-2)」等については従来から株主の関心の高い領域であり、関連した質問が増加することが想定される。

機関投資家への議案説明や株主総会における質疑応答等を通じた株主との対話の機会は、株主の関心や問題意識を全社として認識する良い機会である。単なる想定問答の作成等の準備で終わるのでなく、こうした株主等の「声」を上手く経営に活用していくことで、より強い体質の企業を目指していきたい。

各議案別の動向等の詳細については近日公表予定の詳細編(レポート)を併せて参考にして頂きたい。

(※1)ISSは「5年平均ROE5%未満かつ直近改善傾向のない(5%未満)」企業の経営トップの取締役選任議案に対し反対票を投じる資本生産性基準を2015年2月の株主総会より適用している
(※2)各社の公表賛成率の単純平均値
(※3)赤字企業を除く単純平均値

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