企業経営
「社内」人材交流のすすめ

2014年10月8日

  • 経営コンサルティング部 主任コンサルタント 宮内 久美

異業種間交流、シンポジウム・展示会への参加、社外勉強会・研修など、業務内・外を問わず、社外の人々との情報交換や交流は、視野を広げ、知識を深めるために、また人的ネットワーク構築のために重要だという認識が社会人に定着している。朝活、夜活、ランチョンセミナー等、業務時間外の活動も盛んに行われている。そこで、あえて問いたい。あなたは、同じ社内の人々と十分にコミュニケーションがとれていますか?

日常的にコミュニケーションはとれている、気軽に仕事の相談をできる同僚、上司が多くいる、という方が多いかもしれない。しかし、そこで思い浮かべるのは、同じ部署や日常的に仕事で関わりのある部署の同僚ではないか。

一般的に、企業の組織は事業や機能別に部署が分かれており、各々の部署の役割が異なる。大企業では、普段業務上の関わりがない場合には、社内であっても、部署名をみても実際にどのような業務を担っているかわからない、ということも往々にしてある。また、人事ローテーション制度により社内異動を経験しても、全ての部署を経験しているという人は極めて稀であろう。実際、ある企業で社内コミュニケーションについて尋ねたところ、同じ社内でも、全く自分の業務と関連のない部署の人とは、普段会話する機会もないし、必要性も感じない、と答える人が多かった。

これは業務遂行や企業経営上においては、大変もったいないことだと考える。その理由は多くあるが、以下に、2、3具体的なケースを挙げてみる。

  1. 社外のネットワークを通じて、何らかの仕事の依頼があった場合、社内でその仕事に関わっている人を知っていれば、話が速く進み、新たなビジネス機会につながる可能性がある。
  2. 逆に自分たちの製品なりサービスを売り込む時に、それらの開発や製造に関わっている人を多く知っていれば、自信を持って顧客に勧められ、また何かあった時にすぐに問い合わせもできる。
  3. 新製品、新サービス、新事業の開発の際、自社の保有リソース(技術力、ノウハウ、人材など)を十分に知っていれば、無駄な投資をせずにすみ、またそれらをうまく組み合わせることで、自社独自の新製品や新サービスを生みだす可能性もある。

日常業務に関わりのない社内ネットワークを広げることは、会社の力になるのである。

伝統的に、日本企業は組織力がある、と言われてきた。それは、文化や民族性によるところがあると思われるが、加えていえば、高度成長期には、企業は社員をひとつの家族のように考え、社内行事を積極的に行い、また社宅などの福利厚生も充実していたことから、日常業務で関わりのない同僚とも、比較的顔見知りであったということも組織力を高めていた要因のひとつなのではないだろうか。

翻って現代、社宅は借り上げになり、社内行事も廃止され、社員の業務時間外での交流は減っている。働き方や社員の多様化が進んだ現在、過去に行っていたことを復活させることは難しい。

それでは、会社としてどのようなことができるのか。例えばある企業では、人材、技術、ナレッジを共有するためのデータベースをつくったらどうか、という意見が出た。それも一案であろう。しかし、データベース構築やメンテナンスにはコストがかかる。何より、もしそれで探しあてたところで、実際に目当ての社員と話をしてみなければ、話が進まない。

入社○年研修、ライン課長研修など、同世代、同職位などの研修で社内人材交流を進めているという企業もある。これも一案であろう。しかし、対象が限られるという課題もある。

大和総研で支援したプロジェクトで、副次的効果として社内人材交流が進んだケースがある。その企業では、ある目的のための社内プロジェクトを立ち上げた。複数の部署からメンバーを選んだのだが、お互いはほとんど面識がなかった。そこで、プロジェクトで全社的な課題について議論する過程で、自己紹介や現在の仕事の課題についても話し合う機会を持った。プロジェクト終了後に参加者の感想を聞いたところ、プロジェクトの成果そのものよりも、他部署の人たちと交流できてよかった、励みになった、という社内人材交流の成果をあげる人が多かった。

目的は、部署横断的なものであれば、社会貢献、経営ビジョンなど、なんでもよい。創立○周年などの周年を迎える際に、記念プロジェクトなどを行うこともあるだろう。ひとつの目的を持ったプロジェクトを幅広く社内から集めたメンバーで行うことで、主目的の達成に加えて、社内における人材交流につながる。全社でなくても、事業所レベルでもよい。その際に留意する点は、メンバーは自分の業績や利害を目的にしないこと。同じ会社内であれば、同僚のために汗をかけば、会社全体の利益につながる。そのような事例を増やしていけば、自然と社内人材ネットワークが強固になり、組織力につながっていくであろう。

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