企業経営
人口減少時代における地方銀行の株主政策を考える

2012年5月2日

人口減少時代に入り、銀行業界においては競争力の源泉たる預金の減少が視野に入ってきた。特に地方圏に営業基盤を持つ地方銀行においては厳しい事業環境に直面している。加えて、金融機関同士や事業会社との持合解消の動きもあり、地方銀行セクターの株価は低迷している。

こうした中で外部環境に目を向けると、バーゼルⅢの施行や生き残りを目指した再編の可能性などが考えられ、新たな増資や、安定株主の拡大と言った資本政策の見直しが急務となっている。地方銀行は、改めて株主政策を考える時期を迎えている。

ここで、地方銀行における主要株主の所有株式数割合を時価総額の大きさでクラス分けし、各クラスの平均値を比較してみよう(下図参照)。

地方銀行における主要株主の平均所有株式数割合

時価総額上位10行からなるクラスAは他のクラスと比べて、(1)資金量以上に時価総額の格差が大きい、(2)外国法人等の比率が非常に高い、(3)投信の比率が高い、ことがわかる。トップクラスの地方銀行は、規模が大きく、株式ベンチマークに対する追随性確保の目的や競争力の視点から機関投資家の投資対象となっていることが推察される。

時価総額が下位1/3のクラスDは、(1)外国法人等の比率や投信の比率が低い、(2)個人その他の比率が非常に高い、ことが特徴的だ。このクラスは、資金量も小さく、比較的狭い地域に密着した経営を展開している銀行が多く、規模や成長性の視点から機関投資家の投資対象になりにくい。地域の顧客が株主としてより重要な位置付けにあるものと考えられる。

中間的な特徴を示すのが時価総額上位10行を除く上位1/3および中位1/3のクラスBおよびCだ。このクラスには地方圏に立地する各県トップ地銀の大部分が含まれている。これらの銀行は、比較的低成長な経済環境下にあり、地域における準公的インフラの役割が求められるため、差別化戦略が容易でない。他方、地域の下位地銀や信金・信組ほど地域密着性は強くない。クラスAのような機関投資家の対象にはなりにくいが、クラスDのように地域の顧客が株主として重要な地位を占めるほど関係が強くない状況を反映していると言える。

以上から、同じ地方銀行でも、事業環境、規模、などから株主構成が大きく異なるため、株主政策も異なる戦略が求められる。

機関投資家の投資対象となるクラスAのような地方銀行は、大手事業会社と同様に、他行との差別化や規模拡大等による明確な成長戦略を織り込んだコーポレート・ストーリーを持って機関投資家に訴求するべきであろう。同時に株主重視のガバナンス体制を構築し、着実な経営戦略の実行も重要となる。

クラスDのような小規模な地方銀行は、従来以上に地域の個人株主に焦点を合わせた株主政策が重要となる。そのために、地域の投資家には、地域共同体のメンバーとしての理解を求め、安定株主の役割を果たして貰うための戦略も検討に値する。

クラスBやCのような中間的な地方銀行は、経営戦略に合わせて、クラスAやDにおける株主政策の組み合わせを検討することが重要と言えるだろう。

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