企業経営
合理的な事業計画は四則演算とシナリオが両輪

2012年2月29日

株式の評価、事業の評価を行うにあたって、数多くの企業の中長期的な「事業計画」を目にする機会があった。消費財の製造・販売など日常生活と関わりのある目に見えてわかりやすい事業から、BtoBにおける部品製造などそうでない事業、今後の市場発掘を期待したベンチャービジネスなど、その事業の種類はさまざまである。

「事業計画」を作成するためには、企業が収益をあげる上でどのように活動するか、ヒト、モノ、カネをどのように使うのかを会社のビジョンにあわせて考える必要がある。その上で、実効性のあるものにするためには、数値面での計画と実現に向けたシナリオの両輪が必要である。しかしながら、シナリオが描かれず、目標数値だけを並べた計画となってしまっている場合も少なからずあるようだ。

事業計画でまず重要なのは売上高の算出過程である。「誰に」「何を」「どれだけ」「いくらで」売るかを想定するのが基本となる。数値上の項目である「どれだけ」「いくらで」と、定性的な項目である「誰に」「何を」の関係がいかに合理的に説明できるかがポイントである。「どれだけ」と「いくらで」の掛け算の積み重ねで計画する売上高が説明できることが望ましい。

次に費用である。先に挙げた売上高との関係で「何を」売るのかにおいて、その「何を」をどのように調達するか、誰かから仕入れてくるのか、あるいは自らが製造するのか。その際に「いくら」の費用が必要となるのかが整理できているか。製造する場合には、そのための原材料や設備、人材の手配が計画に含まれているか。また「誰に」売るのかにおいて、売るための仕組や人繰り、物流がどのように設定されているか。
そのほかに、直接売上高につながらない間接費用についても確認することになる。事業の急激な拡大に伴う事務処理増や、拠点の新設・廃止等による家賃増減など、特別な要因がなければ、通常は大幅な変動がみられない費用である。
これら費用は、原料や商品の仕入など売上高に連動する変動費であれば、売上高に対する掛け算で数値化できる。また一般に固定費と考えられる人件費であれば、想定する従業員数と想定給与などの掛け算もしくは現時点での人件費総額に毎年の予想増加率の掛け算、減価償却費であれば既存資産および予定している投資に対する償却年数での割り算で数値化が可能である。

急成長を見込む事業計画において、今年度1億円の売上高が翌年度に10億円になるという極端なケースもある。単純に売上高が10倍になるとすると、「いくらで」が一定であるとするならば、「どれだけ」が10倍になる納得のいく根拠を説明する必要がある。例えば、販売地域を広めるというシナリオならば拠点の設置コストが費用に入っているか、そこでの人件費が見込まれているかなどの整合性を確認するとともに、拡販地域における需要分析があると、なお実現までの道がわかりやすい計画であるといえる。
また、このように特に急成長が見られる計画においては、年度ベースではなく月次ベースでの計画にまでブレイクダウンされているのが望ましい。例えば、今年度分の1億円は、実質2か月分の稼動だけで、実は(1億円÷2ヶ月)×12ヶ月換算で6億円規模の事業であったりする。この場合は実質1.6倍の成長ということであり、「営業人員を1.3倍程度伸ばし、生産性を1.2倍強上げる」という説明がつき、販売管理費に採用活動費の増分が見込まれていると、整合性のある計画と考えられる。

このようにシナリオとそれに沿った数値化がなされていると、実行後の検証もやりやすくなる。どの数値が想定と異なっていたのか、「どれだけ」が足りなかった、あるいは「いくらで」が想定よりも下がってしまったなど、その検証を踏まえることで、有効な差異分析が容易ともなる。また、その結果を踏まえて、次の「事業計画」作成にも活用できる。

事業計画を作成するご担当の方々には、四則演算とシナリオの両輪がどのように描けているのか、再確認されることをお勧めする。

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