企業経営 経済・ビジネストピックス
IFRS適用の留意事項~膨大な注記への対応も忘れずに~

2010年4月28日

  • 経営コンサルティング部 原田 英始

はじめに~IFRSの特徴~

IFRS(国際財務報告基準)を現行の日本基準と比較した場合にその特徴として挙げられるポイントとして、一般的に「原則主義(プリンシプル・ベース)」(原則を明確にして例外を認めない)、「資産・負債アプローチ」(包括利益を業績指標として重視)、「公正価値会計の重視」(経営者の恣意性の排除)などがある。

膨大な注記への対応

上記の特徴以外に、IFRSでは現行の日本基準よりも極めて詳細な注記を財政状態計算書や包括利益計算書等の財務諸表に関連付けて開示することを要求している。IFRS導入準備の初期段階では、「会計基準をどのように適用するか」という当面の課題に対して意識が向かうのは当然であるが、実はIFRSを適用する上で最大のポイントは「(我が国の現行基準よりも極めて)膨大な注記への対応」であると言っても過言ではない。

対応のポイント

会計処理のIFRS対応がある程度進捗した段階で、注記項目の網羅性、情報収集体制及びチェック体制に関する対応を並行して進めることが必要であると考えられる。連結子会社等から連結決算時に情報収集する際に使用している連結パッケージにIFRS用の注記情報を記入する欄を設けて、海外子会社等を含めて網羅的に情報収集する体制を確立しておきたい。さらに、IFRSは現行の日本基準よりも詳細かつ内容的に多岐に亘る注記を要求しているため、財務諸表と注記項目及び注記項目同士の数値が合致しているかどうかについて細心の注意を払わなければ開示ミスが生じやすくなるものと推測される。実務的には複数の開示担当者が注記の作成に関与することになるのであるから、一通り注記事項が完成した段階で、総括的に全体を俯瞰出来るようなチェック体制を確立したい。

開示をめぐる最近の動き

「連結財務諸表の用語、様式、及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成21年内閣府令第73号、平成21年12月11日)が公布されたことを受けて、金融庁は、平成22年3月31日に終了する連結会計年度において、IFRSに基づいて初めて連結財務諸表を作成する場合における開示例を平成21年12月18日に公表した。金融庁によれば、これはあくまで一般的な製造業を想定した「開示例」であり、実務上、連結財務諸表の形式及び内容を拘束するものではないとしている。IFRSの改定に合わせて当開示例も逐次見直しが予定されている。

上場会社に提出が要求されている決算短信について、「IFRS導入で開示の負担が増大するのではないか」と心配している開示担当者も多いこととは思うが、去る3月24日に東京証券取引所の上場制度整備懇談会ディスクロージャー部会が、「四半期決算に係る適時開示、国際会計基準(IFRS)の任意適用を踏まえた上場諸制度のあり方について」を公開した。この報告書では、IFRS導入後の決算短信における注記について「IFRSで求められている情報をすべて決算短信において開示することとすると、その内容が膨大になることが懸念され、業績速報としての決算短信の機能の低下に繋がることが懸念される。したがって、決算短信ではIFRSで求められている注記内容のうち、投資者に迅速に伝達する有用性が高いものに限定して開示することが適当と考えられる。」としている。これは決算短信の「速報性」を重視し、実務者の負担に配慮した提言内容となっている。

おわりに~経営者に課せられた説明責任~

IFRSは上述のとおり「原則主義(プリンシプル・ベース)」をその大きな特徴としている。従来の「細則主義(ルール・ベース)」では、会計基準が細かく規定されているため、「なぜその会計処理を選択したか」について特に経営者が説明する必要はなかった。しかし、原理原則から判断して会計処理を選択する原則主義の下では、なぜそのような会計処理を最適と判断したのかについての理論的根拠を、財務諸表の読者に対し、注記を通じて理路整然かつ明瞭に説明する責任が経営者に課せられている。経営者はこれまで以上に会計処理、開示に対する理解を深める必要があり、会計監査人との事前協議を積極的に行っていく姿勢が大切になると考えられる。

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