M&A
2013年度上期・持株会社導入レビュー

2013年10月30日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 主任コンサルタント 真木 和久

9月24日に、半導体製造装置大手で世界3位の東京エレクトロンと世界首位のアプイライドマテリアルズ(米国企業)が、経営統合について合意し、経営統合契約を締結した。統合持株会社はオランダに設立され、その普通株式は、東京証券取引所及びナスダック株式市場での上場が予定されている。統合新会社の時価総額は、約290億ドルと想定されている(当日、東京エレクトロンが公表したプレスリリース及び説明資料による)。

国境を越えた競合大手企業同志のスケールの大きい組織再編であることから世界的に注目された。これ以外にも今年度上期(2013年4月~9月)中、「持株会社化」を決定した会社がある。本稿では、それらの「持株会社化の背景」について考えてみたい。

(1)5月16日に、日本ケンタッキー・フライド・チキンが持株会社体制に移行すると発表した。会社分割により、2014年4月1日に「日本KFCホールディングス」を設立し、傘下に3事業(①KFC事業、②ピザハット事業、③レストラン運営等の事業)の会社を置く。持株会社設立の目的として、「グループ経営戦略機能の強化・各事業の価値創造力の強化・グループシナジーの発揮」を挙げている。

(2)7月26日には、ドン・キホーテが持株会社体制への移行を発表した。会社分割により、2013年12月2日を目途に純粋持株会社体制をスタートさせ、傘下に総合ディスカウント事業会社・長崎屋(GMS)・ドイト(ホームセンター)等を置く(10月28日に、再度プレスリリースが公表されたが、詳細なグループ図は不明)。持株会社体制へ移行する目的として、①各事業会社の権限及び責任体制の明確化、②機動的かつ柔軟な経営判断を可能にするグループ運営体制の構築を挙げている。

上記で見た事例(1)(2)は、グループ内の持株会社化である。つまり、現状のグループ間の会社形態を変えることにより、グループが求める持株会社化の目的を達成しようとするものである。

持株会社化には、グループ内の持株会社化以外に、経営統合としての持株会社化もある。以下では、その事例を見てみよう。

(3)7月31日に、テレビ朝日・BS朝日の2社は、経営統合の基本合意を公表した。会社分割及び株式交換により、2014年4月1日付けで「テレビ朝日ホールディングス」がスタートし、傘下にテレビ朝日・BS朝日・CSワンテンを抱える。プレスリリースには、「…『日本でトップグループのコンテンツ総合企業』になるためには、地上波・BS・CSの三波一体運用体制をこれまで以上に強固なものとし、コンテンツを起点に放送周辺メディアへさらに戦略的・効率的なビジネス展開を図っていく必要があります。テレビ朝日グループは、このことを組織的・機能的に具現化するための体制として、認定放送持株会社制度を導入すべきとの判断に至りました。」と記載されている。これで、在京キー5局全てが持株会社体制に移行することになる。

(4)8月8日に、関東天然瓦斯開発と大多喜ガスが経営統合することを発表した。株式移転により、2014年1月6日付けで「K&Oエナジーグループ」がスタートし、関東天然瓦斯開発・大多喜ガスはHDの子会社となる。現状において、大多喜ガスは関東天然瓦斯の子会社であるため、本経営統合はグループ内組織再編の側面も併せ持つ。関東天然瓦斯開発は、天然ガスの開発・生産を行う(上流部門)一方、大多喜ガスはお客様への販売(下流部門)を担っている。これらをグループ内で一貫して行っていることが、関東天然瓦斯開発グループの最大の特長であるが、本経営統合により、グループ・シナジーを更に高めることが期待されている。経営統合の目的としては、①グループ戦略機能の強化、②グループ経営資源の効率的活用、③ステークホルダーの価値最大化を掲げている。

持株会社化を決断する会社がある一方、持株会社体制を解消した会社もある。

(5)3月15日に、マルハニチロホールディングスは、持株会社を廃止し、事業会社に移行すると発表した(2014年4月1日に合併予定)。同社は、2007年10月に、マルハグループ本社とニチロの経営統合により、発足した会社である。以下、プレスリリースを一部引用する。「この度、統合の仕上げとして、当グループの中核事業会社である上記五社の合併を実施いたします。当グループは、この合併会社を中核として、グループの経営資源を戦略的に活用できる仕組みを構築し、その仕組みを通じて現状の事業の枠組みを超えた新たな展開を促進していくことにより、グループ全体の総合力の更なる強化を目指します。合わせて、合併会社の『資本の充実』や『管理コストの低減』により、一層強靭な体質への転換と、経営効率の改善を図ってまいります。」なお、詳細なスケジュール等は、7月29日に発表されている。

(6)5月30日に、AOCホールディングス(以下、「AOCHD」とする)は、持株会社を廃止し、事業会社に移行すると発表した。AOCHDを存続会社に、完全子会社である富士石油を消滅会社とする合併により、10月1日に「富士石油(旧商号は「AOCHD」)」がスタートする。AOCHDは、2003年1月に、富士石油とアラビア石油の純粋持株会社として設立された。プレスリリースによると、AOCHDは、持株会社発足「以来、アラビア石油は石油開発事業の再構築に向けて注力してまいりましたが、事業環境が大きく変化する中で当社グループの下で事業の拡大・発展を図ることが困難となったため、当社グループは、石油上流事業からの実質的撤退を進めつつ石油下流事業を軸としたグループ再構築を図っております。かかる状況下において当社は、当社自体が中核事業会社としてグループ全体を牽引し、富士石油が担う石油下流事業を中心としたグループの再構築、経営体制の強化及び経営資源の最適配置を迅速に推し進めるとともに、更なるコスト削減、業務の効率化・合理化を図ることが最良との判断から富士石油と合併することといたしました。」とある。

注意すべき点は、(5)(6)ともに、持株会社体制の効果がなかったから、その解消を行ったわけではないことである。マルハニチロHDは「統合の仕上げ」と表現しているが、持株会社の持つプラスの側面(M&Aの容易さ)等を十分に享受した上で、今回の判断を行ったものである。また、AOCHDは、事業環境の変化により、一層のコスト削減等を行わざるを得なかったことが、持株会社解消の大きな要因といえる。

持株会社に移行するかどうか、あるいは持株会社を解消するかどうかは、極めて高次の経営判断になる。ただ、経営の有効なツールであることは間違いなく、そのため、少なからず導入する会社が増えてきたのだろう。当面はこの傾向が続くものと思われる。

10年以上に亘り、私ども大和総研も数多くの持株会社導入のお手伝いを行ってきた。ほとんど上場企業であるが、業種や会社規模は様々である。

気軽にご相談頂ければ幸いです。

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