M&A
最近の持株会社化の背景

2013年5月22日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 主任コンサルタント 真木 和久

「持株会社」という言葉は、一般的な用語となってきたといえる。ただ、「持株会社」といっても、どういうことを意図して持株会社化したか、知らない人も多い。本稿においては、2013年に「持株会社化」を決定した会社の事例から、皆さんと一緒に「持株会社化の背景」について考えてみたい。

(1)1月17日に、ヤンマーが持株会社体制に移行すると発表した。株式移転により、4月1日に「ヤンマーホールディングス」を設立し、傘下に事業会社4社(①産業用エンジン・農業機械、②建設機械、③エネルギーシステム、④工作機械)を置く。持株会社設立の背景としては、「グローバル経営の更なる高度化とコア事業の競争力の強化」を挙げている。

(2)2月22日には、ハウス食品が持株会社体制への移行を発表した。会社分割により、10月1日に「ハウス食品グループ本社」をスタートさせ、傘下に香辛・調味加工食品事業会社や健康食品事業会社を置く。持株会社体制へ移行する目的として、①グループ経営戦略機能の強化、②各事業の価値創造力の強化、③新事業領域開発・育成力の強化、④グループシナジーの発揮を挙げている。

(3)3月12日に、ファンケルが持株会社移行を検討すると発表した。会社分割により、2014年4月1日の持株会社スタートを予定している(社名はファンケルのまま)。持株会社の目的として、①経営体制および事業執行体制の強化、②グループでのグローバル対応強化を挙げている。

上記で見た事例は、全て、グループ内の持株会社化である。つまる、現状のグループ間の会社形態を変えることにより、各社が求める持株会社化の目的を達成しようとするものである。

持株会社化には、グループ内の持株会社化以外に、経営統合としての持株会社化もある。以下では、その事例を見てみよう。

(4)4月12日に、原信ナルスホールディングス(以下、「原信ナルスHD」とする)とフレッセイホールディングス(以下、「フレッセイHD」とする)が経営統合することを発表した。株式交換により、10月1日付けで「アクシアル リテイリング(以下、「アクシアルR」とする。旧商号は「原信ナルスHD」)」がスタートし、傘下に原信ナルスHD事業子会社・フレッセイHD・フレッセイHD事業子会社を抱える。プレスリリースには、「本経営統合により、両社の資産とノウハウの共有、人材・組織能力の強化、事業基盤の拡大を実現することで、両社が事業を展開している地域のお客様のみならず取引先などのステークホルダーのメリットにも資するものであり、ひいては、原信ナルスHD、フレッセイHDならびに統合新会社であるアクシアルRの企業価値の向上を実現するものと考えております。」と記載されている。

グループ内と経営統合のミックスのような持株会社化の例もあるので、次に紹介したい。

(5)5月10日に、東急不動産・東急コミュニティー・東急リバブルの3社は、経営統合を発表した。株式移転により、10月1日付けで「東急不動産ホールディングス(以下、「東急不動産HD」とする)」がスタートし、傘下に、3社がぶら下がることとなる。東急コミュニティー・東急リバブルは、共に、東急不動産の子会社であるが、今回の組織再編により、東急不動産HDの完全子会社となり、東急不動産とは、兄弟の関係になる。経営統合の目的として、①グループ経営基盤の革新による経営の機動性・効率性の向上、②グループ連携による事業間シナジーの拡大、③財務基盤強化によるグループ各事業の成長加速を掲げている。

持株会社化を決断する会社がある一方、持株会社体制を解消した会社もある。

(6)3月28日に、角川グループホールディングス(以下、「角川GHD」とする)は、持株会社を廃止し、事業会社に移行すると発表した。角川GHDを存続会社に、主力連結子会社9社を消滅会社とする合併により、10月1日に「KADOKAWA(旧商号は「角川GHD」)」がスタートする。同社は、2003年4月1日に持株会社体制を発足後、連結売上高を888億円(2003年3月期)から、1,616億円(2013年3月期)まで倍増させてきた。また、持株会社体制の下、活発なM&Aを行ってきた。プレスリリースによると、角川GHDは、「激しく変化する外部環境にスピーディーかつダイナミックに対応し、収益力とキャッシュフローの向上を図り、機動的な新規事業の展開を加速するためには、IP(コンテンツ)・ID(顧客)を一つの会社に統合・結集する更なる組織再編が必要と判断」した。

注意すべき点は、持株会社体制の効果がなかったから、その解消を行ったわけではないことである。持株会社の持つプラスの側面(M&Aの容易さ)等を十分に享受した上で、自社の今後の戦略を見据えて、今回の判断を行ったものである。

今後、企業が成長する上で、持株会社体制が適切であれば、それを選択するであろうし、戦略上、事業会社が適切であれば、戻すケースも出てくるだろう。柔らかい頭で、自由自在に企業運営をする時代になってきた。

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