経済・ビジネストピックス
事業性と革新性で変わるソーシャルビジネスの新たな展開

2012年7月4日

  • コンサルティング・ソリューション第一部 耒本 一茂

ソーシャルビジネスは、事業を通して社会的な課題を解決していくという意味で「新たな公共」を担う重要な使命がある。従来の公共では手の届かなかった部分を斬新なアイデアと採算性のあるビジネスで解決していくことが求められている。ソーシャルビジネスについては、「社会起業家」や「社会的企業」などと表現されることもあり、明確な定義がないのが現状で、その内容は時代と共に価値観も変わってきた。これまではボランティア活動のような「社会性」のみを重視することが多かったが、「事業性」と「革新性」が加味され、ソーシャルビジネスの新たな自立と進化が期待されている。

内閣府によりソーシャルビジネスの新たな仕組みづくりが開始されて3年目を迎えた。2009年12月8日の閣議決定で「明日の安心と成長のための緊急経済対策」の発表を契機に、2010年3月には総額70億円をかけての地域社会雇用創造事業(社会的企業支援基金)が開始された。具体的には、社会的事業の推進母体として選定された12団体を通して、「社会起業インキュベーション」と「社会的企業人材創出・インターンシップ事業」の両側面から新たな雇用創出プログラムが提供された。

2012年6月19日に公表された報告によれば、創業と雇用促進のそれぞれ成果が説明されている。社会起業インキュベーション事業では、同年5月末時点で853件の社会起業家を輩出し1,984人の新たな雇用を創出。社会的企業人材創出・インターンシップ事業では、1万3,000人が研修プログラムに参加し、862人の就業・起業につながった。具体的な事業テーマも幅広く、地球環境問題の改善、介護支援、地域ブランド向上、ワーキングマザー支援、就農支援など様々である。

創業と就業の両事業への関心の高さも、年齢層によって若干の違いが見られた。社会起業インキュベーション事業では30才~40才代が半数以上を占めているのに対し、インターンシップ事業への参加者の年齢構成を見ると、20才代が37.3%と最も多くなっている。20才代の若者はインターンシップ事業への関心が高く、子育てや地域の社会的課題にふれる機会が多い30才~40才代は、会社を辞めて新たな生き方を模索する形で創業するケースが多いことが示された。

12の推進母体のうちの1つである社会的企業育成支援事業コンソーシアムは、社会起業家を育成するための「iSB公共未来塾」を運営してきた。事業性と革新性を高めるために、様々な工夫を凝らした。研修プログラムでソーシャルビジネスの基本的な経営手法を学ばせた後に事業計画を作成し、それらをビジネスコンペで評価することで事業内容のレベルアップを図っている。

創業と就業の観点からこれらの支援事業がソーシャルビジネスのあり方を大きく変えたことは確認できたが、創業後も活動拠点となるインキュベーション施設が新たに必要となる。東京都は2011年7月より「ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDA」を開設。都の創業支援施設としては初めて、社会的課題の解決に取り組むソーシャルビジネスに特化した施設を立ち上げた。墨田区で開催される「ゼロから始める起業ゼミ」などの受講生が社会起業家となり入居するケースが増えている。同ゼミ卒業生の三田大介氏は、地元企業の工場廃材を活用して新たなビジネスチャンスを創出する試みにより、社会的にも意義のある「配財プロジェクト」を推進しており注目を集めている。

2010年12月に設立された関内イノベーションイニシアティブ株式会社が運営するソーシャルインキュベーション施設もユニークな活動を展開している。横浜市や神奈川県を代表する地域企業と社会起業家育成ノウハウを持つ企業が協力して立ち上げた施設である。シェアード型オフィスとすることで低価格化を図り、多くの創業事例の確保につなげている。

ソーシャルビジネスは様々な社会環境変化と社会的課題の変遷を背景に、今も変化を続けている。東日本大震災の復興支援に特化した支援プログラム「SEEDx地域未来塾」などは新たな活動の代表例である。被災地復興を課題として捉え、自立したソーシャルビジネスの展開を目指す。

ソーシャルビジネスでさらに社会的な課題を解決していくにはどうしたらよいのだろうか?社会性、事業性、革新性の3つを備えたソーシャルビジネス支援が急務となっている折、ソーシャルビジネスに精通したコンサルタントや、インキュベーションマネージャー、コーディネーターといわれる人材の活用が欠かせない。社会的な課題を整理して最適なアイデアを創出するための発想法や新規事業開発手法なども求められる。同様の手法を大企業が実施している社会貢献事業に展開できれば、大企業が社内ベンチャー制度を活用してソーシャルビジネスを行うことも有効となる。また、社会的企業人材創出・インターンシップ事業の就業者のうち、学生を除く無業者の比率は22.5%であった。ソーシャルビジネスを活用すれば、生活保護問題となりうる無業者の就業に繋がるかもしれない。ソーシャルビジネスは今後さらに進化する可能性を秘めている。

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弊社では、課題を整理して最適なアイデアを創出するための発想法や新規事業開発手法、起業家育成支援プログラムを構築しており、ソーシャルビジネスの事業性、革新性を高めるための支援サービスやインキュベーション施設の設置や改善に関する支援メニューを多数ご用意しております。
お問い合わせフォームよりご意見・ご質問等お気軽にお寄せください。

取材協力
【ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDA】坪田哲司 氏
(合同会社ティー・アソシエイツ代表、社会的企業コンサルタント。公益財団法人東京都中小企業振興公社ソーシャルインキュベーションオフィス・SUMIDAインキュベーションマネージャー、SEEDx地域未来塾(内閣府「復興型地域社会雇用創造事業」選定)インキュベーションマネージャー)
【関内イノベーションイニシアティブ株式会社】森 将隆 氏

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