経済・ビジネストピックス 企業経営
IFRSの導入による監査への期待と現実

2009年11月4日

  • 金融・公共経営コンサルティング部長 内野 逸勢

最近、我が国でも、金融庁がIFRS導入のロードマップを示したことを一つの契機として、国際会計基準(IFRS)の関連情報が巷に氾濫しており、規制当局、経営者、投資家等、関連当事者のIFRSへの関心の高さが伺える。一方、IFRSに準拠して経営者が作成した財務諸表を監査する側への注目度合いは、相対的に低いように思われる。実は、後者に関連する重要な問題として、実務的に可能な監査と、IFRSの導入によって主にユーザーから期待される監査との乖離(expectation gap)の存在(拡大)があり、我が国においても監査する側への注目度を高めていく必要がある。国際監査・保証基準審議会(IAASB)及び関連委員会は、この乖離を強く認識しており、議論を重ねている。特に、CDSを含む複雑な金融商品の公正価値評価等について、監査上行うべきリスク評価の程度、入手すべき監査証拠の程度、必要な証拠のレベル等、監査の実務的な側面が問題視され、国際会計基準審議会(IASB)との調整、ガイドラインの拡充等、具体的な対応を行っている。

9月にワシントンD.Cで行われた国際監査・保証基準審議会(IAASB)の諮問助言委員会(CAG)の会合において、PCAOB(米国の公開会社会計監視委員会)が、監査対象企業の事業環境が目まぐるしく変化する中、監査リスクを最低にするために、期待される監査人の対応を説明するにあたって、上記の乖離を以下のようにうまく(?)表現していた。「監査人は、実務的には、投資家への財務諸表開示レベルの制限、財務諸表監査の限界の説明等を実施することにより、財務諸表監査のリスクを最小にする現実的な対応が期待されている。その一方、ウォーレン・バフェットのように顧客のビジネスの特質を理解して、顧客の収益性、健全性、継続性を判断することも期待されている(例えば、エンロンの収益構造を理解していれば、エンロン事件も防げたと説明)。」

筆者自身も含め上記会合の参加者は、実際に可能な監査(実際の対応)と期待される監査(期待される対応)との乖離が拡大していくことに懸念を持っている。このような懸念に対して、IAASBはIASBとの更なる関係強化に努めている。具体的には、IASBとの連絡・協議会(リエゾン)の設置を準備している。当該リエゾンにおいて、検討される項目は、排出権取引、公正価値の測定及び金融商品、リース契約、収益認識等である。IFRS設定の段階から、監査可能性(audit-ability)に関する潜在的課題を特定する能力を高めようとする意図がうかがえる。このリエゾンが、上記の乖離幅の縮小に貢献することを期待したい。

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