[2009.11.27]第89回 話題のスマートフォンを海外で使用したいのだが…
筆者は今月、海外旅行先での使用を視野に入れ、携帯電話を家電量販店で物色していた。かねてから興味があり、価格的にも手頃だったAndroid搭載スマートフォン(多機能携帯電話)について、購入を前提に店員と話をしていた。しかし、海外で使うつもりだと知った店員の表情が、とたんに曇った。
海外での使用を考えるなら、現時点では日本のAndroidやiPhoneなどのスマートフォンは買わないほうが良いというのである。
Android(アンドロイド)は、スマートフォン向けアプリケーション基盤としてグーグルが開発したソフトウェアの名称である。今のところ日本でAndroidを搭載している携帯電話はNTTドコモの1機種(台湾のHTC製)のみだが、来年(2010年)には、ソニー・エリクソン、シャープなど、主要な携帯電話機メーカーが発売を予定している。海外でもモトローラがAndroid搭載機種「DROID」を今月(2009年11月)発売しており、スマートフォン市場で先行するアップルのiPhone(アイフォーン)を脅かす存在としても、いよいよAndroidが本格的に注目されてきたという状況である。
ただし、より高い機能、より豊かな表現を追求しているスマートフォンでは、それに比例してパケット通信量も膨れ上がる。さらに店員の説明では、Android搭載機種ではたとえ未使用時でも電源がオンの間はデータの自動更新などで通信が常時発生しており、パケット定額制の上限額に毎月到達する可能性が高いということだった。
それでもパケット定額制の上限額に収まるなら安心なのだが、海外で使用する場合はそうはいかない。国際ローミングサービスは、日本のパケット定額制の対象外となり、多くの場合で従量課金制となってしまうからである。たとえば、写真やアプリケーションのダウンロード1件(1MBの場合)で約2千円、そしてAndroid自体のバージョンアップに約2万5千円の通信料金がかかってしまう可能性がある。そうした事情を踏まえて、その店員は私に購入を勧めなかったのだった。
しかし、そうした事情を理解せずに海外でパケット通信を利用したのちに、「パケット定額制を契約していたのにキャリア(電話会社)から高額請求が来た」という利用者からの相談事例が報告されており、総務省や国民生活センターも注意を呼びかけている(※1)。筆者も、店員の的確な説明を受けなければ、何も気付かないままそうしたトラブルに遭っていたかもしれない。
なお、海外である程度長い期間滞在するなら、国際ローミングサービスを利用せずに、海外のキャリアのSIMカードを入手するという解決策が一見ありそうに思える。携帯電話機には、SIM(Subscriber Identity Module)カードと呼ばれる、電話番号等を特定するためのID情報を格納した各キャリアのICカードが搭載されている。また、SIMカードは着脱可能であり、そのインタフェースは国際規格化されている。そのため、あるキャリアのSIMカードを複数の携帯電話機で使用できるし、複数のキャリアのSIMカードを一つの携帯電話機で取り替えて使用することも、技術的には可能である。
しかしここで「SIMロック」と呼ばれる制限が存在する。日本で販売されているほとんどの携帯電話機には、購入時に契約したキャリアのSIMカードしか使用できないように制限がかかっている。そして、AndroidやiPhoneなどのスマートフォンも、現時点ではこのSIMロックがかかった状態で国内販売されている。つまり、海外では国際ローミングサービスを利用せざるを得ないということになる。
このSIMロックには、携帯電話機の販売価格を安く抑える代わりに通信料金で利益を確保するという日本のキャリアのビジネスモデルが背景にある。また、SIMロックが解除されない別の理由として、携帯電話機の機能、キャリアの通信サービスとアプリケーションが、日本では一体化しており、SIMロック解除の利点が小さいということが挙げられている。
しかしそれは、国際的なスマートフォンのAndroidやiPhoneには当たらない議論であろう。それに日本の携帯電話機市場は、すでに1人1台は行き渡って飽和状態であり、2台目の需要や法人での需要を喚起すべく、携帯端末や販売形態の多様化が期待されているところである。総務省が2007年に開催した「モバイルビジネス研究会」の最終報告書でも、市場の動向を注視しつつ、2010年の時点で3.9Gや4G(次世代携帯電話)を中心として「SIMロック解除を法制的に担保することについて最終的な結論を得ることが適当である」としている。
海外でも安心料金で使えるスマートフォンというのは、あらたな需要喚起としても有力なのではないか。国際ローミングサービスへのパケット定額制の拡大、あるいはSIMロックの解除など、今後のスマートフォンの普及、発展へ向けた環境整備を期待したい。
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