情報技術研究 IT TIME

[2009.07.17]第71回 使い分けが求められるパブリッククラウドとプライベートクラウド ニューヨーク発
 
二宮 聡広
これから8月にかけて、いよいよ本格的に夏が到来する。国内の海水浴場で過ごす人もいれば、予算を奮発して海外のプライベートビーチでゆっくりと過ごす人も多いのではないだろうか。夏の公衆海水浴場では、荷物の盗難や子供の迷子などに注意が必要だが、プライベートビーチを利用する場合は利用者が限定されており、利用料金と引き換えに公衆海水浴場での不安を軽減して時間を過ごすことができる。

この公衆(パブリック)とプライベートという概念は、企業向けクラウドコンピューティングサービス(※1)(以下クラウドサービス)の利用形態に対しても使用されている。現在クラウドサービスとして、自社システムをサービス提供者のクラウド基盤に配置して、インターネット経由で利用するパブリッククラウドが提供されている。自社でシステムインフラを構築する必要がないため、初期費用を少なくすぐに利用できる一方、セキュリティーやデータ保護、可用性に対して懸念の声が挙がっている。例えば、自社のデータがその他の顧客と一括で管理されることへの懸念を持つ企業は多い。

そこで、プライベートクラウドという形態が検討され始めている。これは自社データセンターでクラウド基盤を用意し、社内における各利用部門が必要な時に簡素な手続きでそれを利用する形態である。例えば利用部門がサーバーやディスクを追加で利用したい場合に、購買手続きを行うことなくシステム拡張をできるようにする。これにより、迅速なシステム拡張が可能になる。加えて、社内の情報資産を共通化・集約することによる管理コストの低減も享受できる。

経済不況下におけるコスト削減の大号令を追い風にして、クラウドサービスは米国のIT関連のカンファレンスにおいても盛んに話題に挙がっている。初期費用が少なく、そしてすぐに利用できるパブリッククラウドの利用はCRM(※2)などの基幹業務以外の分野で進んでいる。また、大企業を中心にプライベートクラウドの利用を検討する企業もみられるようになった。パブリックとプライベートといったクラウドサービスの使い分けはそのシステムの特性や、サービスレベルやコストをふまえて慎重に検討を行うべきである。

今後、企業では所有から利用へという流れにのって経営戦略を柔軟に反映できる情報システムの利用に意識が高まっていくとみられる。上述したクラウドサービスは、経営戦略を柔軟にシステムに反映するための手段として有効である。一方で、他サービスと独立した基盤で稼動するべき、つまりクラウド基盤を使用しない業務も存在するであろう。ここに、クラウド基盤を始めとしたどのシステム基盤でシステムを稼動すべきかを企業横断的に検討する新たな役割が発生するのである。「システムの所有」の呪縛から解放された情報システム部門の新たな役割として、サービスレベルやシステム特性とコストのバランスをとりながら情報システムの最適配置を行うことが求められるのではないだろうか?

(※1)クラウドコンピューティングサービス:利用者がどのコンピューター資源を使っているかを意識する必要なしに、ネットワーク経由で情報処理サービスを利用できるサービス

(※2)CRM:Customer Relationship Management 顧客情報管理
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