| [2009.05.22] |
第64回 リバース・エンジニアリングの早期適法化を |
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小川 創生 [プロフィール] |
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| ソフトウェアの仕組みを調査、解析する手法の一つとして、リバース・エンジニアリングがある。ソフトウェアの動作や構造を分析した上で、製造方法を探知したり、設計図やソースコードを復元したりする技術のことである。 |
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| どのような目的でリバース・エンジニアリングが必要となるのか。主な目的を挙げると、新規のプログラム開発における既存プログラムとの相互運用性の確保、ソフトウェアの障害やセキュリティ脆弱性の発見や確認、プログラム開発に必要なアイデアの抽出、などがある。リバース・エンジニアリングは多目的に活用できる有益な技術であると言える。 |
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| しかし日本では、上記のいずれの目的においても、リバース・エンジニアリングの適法性が定かではない。このような行為は著作権法で言うところの複製または翻案に該当し、著作権侵害となる可能性が指摘されているからである。 |
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| 筆者も、適法性の不確かなリバース・エンジニアリングが必要な場面に遭遇した経験がある。その際には、逆アセンブルと呼ばれるリバース・エンジニアリングの一種を、障害の発見を目的として実施するか否か、ソースコード非公開の商用ソフトウェア製品について検討した。その製品のライセンス契約には逆アセンブルを禁止する条項があり、日本ではそうした契約を無効とする明確な法規定がない。緊急を要する状況でもなかったため、結局は逆アセンブルを断念した。 |
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| ただし、そうした問題を承知の上でリバース・エンジニアリングを実施しているITの現場は少なくないと推測する。「いざそういう必要に迫られたら逆アセンブルしてしまいますよ、ねえ?」と他社の技術者に同意を求められたこともあるくらい、曖昧でいささか危険な現実が存在している。 |
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| この問題は以前から論じられており、様々な意見がある。日本の現行法でも適法だとする意見もあるが、現行法ではいささかでも違法の可能性があり法改正が必要だとするのが通説である。一方で、ソフトウェアの権利保護の観点から法改正に消極的な意見もあり、適法化へ向けた著作権法改正が見送られてきた。 |
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| 海外では、たとえば米国の場合、フェア・ユース(公正使用)に該当すれば著作権侵害とはならないとする包括的な規定があり、通常のリバース・エンジニアリングは法的に問題ないとされている。他にも、一定の条件の下でリバース・エンジニアリングを適法化する法律を複数の先進国が設けている。 |
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| 最近になって日本でも、イノベーション(技術革新)創出による国際競争力の強化などの観点から、リバース・エンジニアリング適法化への動きが活発化している。政府の知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2008」では、2008年度中にリバース・エンジニアリング適法化のための法的措置を講ずることが明記されていた。 |
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| しかし、先日衆議院で可決された著作権法改正案には、リバース・エンジニアリング適法化の改正は含まれていない。文化庁の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会が今年提出した報告書では、相互運用性の確保や障害の発見などの目的によるリバース・エンジニアリングの適法化に関しては、早期の措置が必要との意見の一致が概ね見られたとしている。しかし、意見が分かれた他の目的も含めて、「目的の定め方など具体的な範囲や条件については、引き続き検討を行う必要があると考える」とし、結局は改正案への反映に至らなかったようである。 |
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| 今後、日本版フェア・ユース規定の新設と合わせて検討が続けられる可能性もあるのだが、そうなると実際のリバース・エンジニアリング適法化はさらに遅れるかもしれない。アイデアの抽出などを目的としている場合については、イノベーション創出と権利保護との間で議論の余地があるだろう。しかし、相互運用性の確保や、障害や脆弱性の発見など、より公益性の高い目的によるリバース・エンジニアリングについては、早期の適法化を期待している。コンプライアンスを真面目に考える技術者ほど苦悩し続けなければならない現状は、早期に改善されるべきである。 |
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