日本経済予測(四半期)
第192回日本経済予測(改訂版)<訂正版>

トランプ政権成立で何が起きるのか?~「グレートローテーション」や働き方改革などを検証~

2017年3月9日

  • エコノミック・インテリジェンス・チーム 執行役員 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • シニアエコノミスト 長内 智
  • エコノミスト 岡本 佳佑
  • エコノミスト 小林 俊介
  • エコノミスト 前田 和馬
  • 田中 誠人

予測のポイント

  1. 日本経済はバランスの取れた成長軌道へ:2016年10-12月期GDP二次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2016年度が前年度比+1.4%(前回:同+1.3%)、2017年度が同+1.4%(同:同+1.3%)、2018年度が同+1.1%(同:同+1.1%)である。先行きの日本経済は、①輸出の持ち直し、②在庫調整の進展に加えて、③底堅い消費・設備投資に支えられた内需の回復により、バランスの取れた成長軌道へと移行する見通しだ。本予測では、以下の3つの論点について考察した。
  2. 論点①:トランプ政権成立で何が起きるのか?:2017年1月に米国でトランプ政権が成立したことを受け、①保護貿易主義化、②移民政策、③米国の通貨戦略についてその影響を検証した。主な結論は以下の3点である。第一に、米国がNAFTAから脱退するだけであれば、日本経済への影響は軽微なものにとどまるが、国境税調整が導入された場合には、日本の実質GDPは▲0.4%程度下押しされる可能性がある。第二に、200万~300万人の不法移民の強制送還によって労働者が減少すれば、米国の潜在GDPは▲0.7~▲1.1%程度押し下げられるリスクがある。第三に、為替市場では短期的にはドル高が進む可能性が高いものの、中長期的にみると、インフレ懸念が後退した際には、トランプ大統領が本格的な「ドル安政策」に踏み切る可能性がある(→トランプ政権成立が日本経済に与える影響についてご関心のある方は、弊社が2016年12月に緊急出版した『日経プレミアシリーズ:トランプ政権で日本経済はこうなる』(日本経済新聞出版社)をご一読いただきたい)。
  3. 論点②:「グレートローテーション」は継続するか?:現状、世界的なマネーの流れは、債券から株式へとシフトする「グレートローテーション」の様相を呈している。これは、FRBが2015年12月から利上げ局面に入ったことで長期金利が上昇を続ける一方、世界的な景気の回復により株高が継続しているために起きている。グレートローテーションは、景気が下降し、株式相場が調整局面に入ると終了する。今後グレートローテーションが継続するか否かを占うメルクマールとしては、①世界経済の成長率が上方修正されるか、②銅価格が上昇するか、③米国の通貨当局がドル安政策を取るか、という3点に注目したい。
  4. 論点③:日本経済再生にとって今なぜ働き方改革が重要か?:日本経済は、トランプ政権の影響という「外患」に備えることが非常に重要な一方で、潜在成長率の長期低迷という国内の構造的な「内憂」にもしっかりと向き合う必要がある。人口減少社会に突入している日本では、潜在成長率の向上という観点から、働き方改革の加速などを通じて女性や高齢者の活躍を一層進めることが課題となっている。女性の積極的な労働参加が進む欧州諸国と比べると、日本は依然として見劣りしており、女性の労働市場への参加余地はまだ大きい。仮に育児や介護対策で就業障壁が完全に撤廃されることになれば、最大で100万人以上の女性が就業することができる計算となる。
  5. 日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、①トランプ大統領の政策、に加えて、②中国経済の下振れ、③米国の「出口戦略」に伴う新興国市場の動揺、④地政学的リスクおよび政治リスクを背景とする「リスクオフ」、⑤英国のEU離脱交渉や欧州金融機関のデレバレッジ、の5点に留意が必要だ。
  6. 日銀の政策:日銀は、現在の金融政策を当面維持する見通しである。2016年9月に導入した新たな金融政策の枠組みの下、デフレとの長期戦を見据えて、インフレ目標の柔軟化などが課題となろう。

【主な前提条件】
(1)公共投資は16年度▲1.3%、17年度+4.6%、18年度▲1.5%と想定。
(2)為替レートは16年度108.5円/㌦、17年度113.9円/㌦、18年度113.9円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は16年+1.6%、17年+2.3%、18年+2.6%とした。

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