日本経済中期予測(2014年8月)

日本の成長力と新たに直面する課題

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2014年08月04日

サマリー

◆大和総研では日本経済中期予測を半年ぶりに改訂し、今後10年の日本の経済成長率は平均で実質1.5%、名目2.3%と予想する。前後半に分けると、消費増税の影響で個人消費が下押しされる前半の実質1.3%成長から後半は1.6%成長に加速しよう。


◆労働需給のタイト化は賃金の伸びを支えるだろうが、国際競争の進展で構造的に賃金上昇が抑制される可能性があり、国内の空洞化は今後も進む可能性が高い。


◆安定的に2%のインフレ目標を達成することは高いハードルであり、予測期間中は日銀の緩和的な姿勢が継続する。また、緩和の長期化により出口戦略は困難になるだろう。


◆今後10年の世界経済は平均で3.4%の成長になるだろう。ただ、米国経済に対する見方を下方修正し、Fedの金融引き締めペースは従来よりも緩やかになると想定する。


◆今後10年の為替見通しは、短期~中期では日米金利差の拡大が円安要因になるものの、長期的にみれば購買力平価に向かって円高へ推移するだろう。


◆安倍政権が今年6月に発表した新成長戦略に対する評価はB+と、一年前から上方修正した。ただ、大きな前進が見られる分野がある一方、雇用面では課題が残る。日本の成長力を伸ばすには、雇用・人材面でさらに一歩進んだ成長戦略が必要である。


◆新成長戦略では、新たな担い手として、女性の活躍推進や外国人材の活用に期待が集まっている。女性のM字カーブ解消は途上の段階であり、男女の賃金格差や正規・非正規の問題など改革しなければならない課題は広範囲に及んでいる。


◆目次

  1. 予測のポイント
    1. 今後10年の世界経済と日本経済
      1. 今後10年の世界経済
      2. 今後10年の日本経済を読む10の勘所
        1. :今後10年間の経済成長率は名目2.3%、実質1.5%の見込み
        2. :消費増税の「所得効果」により、短期的な消費は弱含む見通し
        3. :賃金の伸びは労働需給のタイト化に支えられるが、見通しは慎重に
        4. :国内産業の空洞化は今後も進展する可能性が高い
        5. :「経常収支が赤字化したら財政破綻」ではない
        6. :設備投資は、短期的には弱含むが、中期的に加速し、長期的には減速と予想
        7. :緩和的な金融政策が予測対象の全期間にわたり継続
        8. :為替レートは短期~中期では円安水準の維持、長期では円高を予想
        9. :財政健全化の道程は厳しく、プライマリー・バランスの黒字化は困難
        10. :エネルギー政策は、緩やかなペースでの原発再稼働や再生可能エネルギー導入


    2. 日本の成長力はどうなるか
      1. 新成長戦略の概要
      2. 労働力の動向が成長の天井を左右
      3. 法人税改革の行方
      4. まとめ

    3. モデルの概説とシミュレーション

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