経済・社会構造分析レポート
長時間労働の是正は本当に実現するのか?

周辺制度を含む一体的な「慣行」是正がカギに

2017年4月12日

サマリー

◆2017年3月末、政府の「働き方改革実現会議」から働き方改革の実行計画が公表された。会議前半の大きなテーマは同一労働同一賃金であったが、後半は長時間労働の是正に議論が集中した。しかし、実際に長時間労働は是正されるのだろうか。

◆日本の総労働時間が長期的に減少しているように見えるのは短時間労働者の割合が増えたことが原因であり、正規労働者の労働時間はこの20数年間で変化がない。一方、休日日数は増加していることから、平日における残業にそのしわ寄せが起きている。今後は「平日の残業時間の削減」と「有給休暇取得率の向上」がポイントとなろう。

◆一般に労働時間が長いのは男性であり、特に若年層・中小企業・中所得層で労働時間が長くなる。一方、女性ではより若年層かつ規模の小さい零細企業にて長時間労働者が増えやすい。高所得・高学歴層と低学歴層では男女共に労働時間が長い傾向にある。

◆職種・業種別では、36協定の適用除外の業種である輸送関連で顕著であるが、販売・サービスなどの対個人向けサービスや管理的・専門的な職種・業種に従事している人々でも、労働時間が長くなりやすい。

◆残業時間を規制するはずの36協定は機能せず、割増賃金規制についてもあまり機能してきたとは言えない現実がある。今回の政労使合意では、労働基準法改正により罰則規定付きで残業時間の規制を行うことが合意された。

◆長時間労働規制が機能するには、労働基準監督署の人員増加などで労働市場の監視・制裁機能を強化するのとともに、長時間労働「慣行」の是正もカギになる。日本型雇用慣行を弱め、職務の明確化・雇用流動化などを前提に周辺制度の改革を行うことが重要だ。

◆対価を見込める業務へ貴重な労働時間をシフトさせ、対価を見込みづらい業務は削減するか機械化・IT化を進めることが重要だ。さらに心身の健康を高める余暇の確保や、より重要なのは、技術進歩に備えた自己研さんの時間を作ることだ。今後の雇用流動化の高まりや個人の労働生産性を高める意味でも、能力向上のために時間を確保することは重要であることから、長時間労働の是正はやはり急務であると考える。

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