経済・社会構造分析レポート
雇用の悪化なき最低賃金引き上げは持続可能であるか?

「年収アップ」に2つの山と壁が立ちはだかる

2016年10月6日

  • エコノミック・インテリジェンス・チーム シニアエコノミスト 長内 智

サマリー

◆2016年度の最低賃金の引き上げ幅は全国加重平均で25円と決定され、最低賃金の水準は823円と初めて800円台に乗ることとなった。安倍首相は、最低賃金を将来的に1,000円まで引き上げる方針を示している。最低賃金引き上げの動きは、決して日本に限ったものではなく、世界各国でも同様に観察される。最低賃金引き上げを巡る議論では、低所得者層の賃金底上げを通じて格差を縮小させるという視点も重要である。

◆最低賃金を3%程度引き上げることにより、短時間労働者(女性)の時給を1.7%程度底上げする効果が期待される。労働者の属性によっては、最低賃金の引き上げが年収の増加に必ずしもつながらない点に留意したい。「年収アップ」に立ちはだかる2つの山と壁を取り除くことが今後の課題だと考える。

◆伝統的な経済学に基づくと、完全競争的な労働市場では、政府が最低賃金を引き上げると雇用は減ると想定される。他方、アベノミクスの下で最低賃金が大幅に引き上げられる一方、雇用の改善が続いているという日本の現状は、最低賃金の引き上げが雇用に悪影響を及ぼすという教科書的な内容とかなり様相が異なっている。

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